那谷明弘TM・思い出のダービー 1997年第64回『“フロック”ではなかった二冠馬 サニーブライアン』

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フロックでなかった二冠達成

 サニーブライアンの二冠といえばフロックという言葉を思い出す人も多いことだろう。英語では「Fluke」と表記されるが、もともとはビリヤードで使われていた用語で、フルークが訛ってフロックという和製英語になった。「思いがけずうまくいくこと。まぐれで成功すること」を意味するのは説明するまでもない。アナウンサーがゴールした瞬間に絶叫したフレーズ「これはもうフロックでもなんでもない!二冠達成!」は名実況としてよく知られている。

 皐月賞を勝ってもサニーブライアンの評価は上がらなかった。クビ差の辛勝だったことに加え、単勝は11番人気で5180円、馬連の配当が5万円を超える大波乱の決着はいかにもフロックに映った。ヒダカブライアンの凡走やオースミサンデーの競走中止、メジロブライトランニングゲイルといった人気の差し馬たちが牽制し合ったノーマークによる展開利も、恵まれた勝利だと見なされた大きな理由だろう。しかし「競馬の神様」は慧眼だった。故大川慶次郎氏(1929-1999)はダービーの最終追い切りで当時、芦毛の怪物として評判になったスピードワールドに先着をするのを見て「やはりGIにフロックはない」と確信したという。

 ダービーでは6番人気(発走直前に除外されたシルクライトニングの方が上位人気で実質的には7番人気)の支持を受けたが、皐月賞馬にしてはいかにも中途半端な感は否めず、実力に対する評価がファンの間でも図りかねたことを物語っていよう。前走と同じ大外枠を引いたサニーブライアンは鞍上・大西直宏の宣言通り、好スタートから迷うことなく逃げに出る。同型で素質の高さから注目を集めたサイレンススズカは最初から抑える作戦が裏目に出て折り合いがつかない。これでまんまと作戦通りの一人旅になる。隊列が決まってからは淡々と向こう正面を進み、3コーナーの大欅を過ぎたあたりでマチカネフクキタルメジロブライトシルクジャスティスらが外から徐々に進出を開始して直線入口へ。まだ手応えに余裕があったサニーブライアンはラスト400mを切って仕掛けられるとあっという間に後続を引き離し、ラスト1ハロンを切った段階でセーフティーリードともいえる5馬身差。さすがに最後は脚色が衰えたものの、最速の上がり34秒2で最後方から追い込んだエリモダンディーや猛然と脚を伸ばしたシルクジャスティスらの追撃を1馬身抑えてゴール。ジョッキーも「してやったり」の会心の騎乗だったようで、何度も大きく鞭を振り上げて喜びを爆発させたのが印象的だった。

那谷明弘

筆者:


1970年神戸市生まれ。慶応大学文学部卒。95年入社。美浦で時計班として所属したのち、96年秋から栗東トレセンで取材を担当。夏の小倉出張は10年を越える。予想は「競走馬の強さはラップに現れる」、馬券は「血統と確率論の理解が必須」がモットー。

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