那谷明弘TM・思い出のダービー 1997年第64回『“フロック”ではなかった二冠馬 サニーブライアン』

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プロとしての自覚を促してくれた馬

 当時は美浦に所属していたのでライブ観戦していたのだが、「ああ、逃げ切られる…」と早々と諦めた苦い思い出がある。昔のことなのでどの馬から買っていたかは、もはや忘却の彼方だが、いずれにしてもサニーブライアンを相手として選んでいないので心をときめかすシーンはただの一度もなく完敗だった。

 なぜ予想が外れ、馬券でもおいしい思いができなかったのにダービーといえばサニーブライアンなのか? おそらくこのレースから学んだことや身に染みた衝撃の大きさが強烈な記憶となって残っているに違いない。競馬記者2年目で駆け出しだった若造は、皐月賞がフロックというマスコミが繰り返す先入観に流されてしまい、軽視してしまったのだ。本来なら予想、特にGIともなれば展開を読むことから始まり、過去のレース映像を繰り返し見たり、ラップを精査したり、血統から考えられる適性なども考慮して、曇りなく力関係を把握しなければならない。もしもっと検討を重ねていたら「1981年の二冠馬カツトップエースと同じパターンではないか?」という分析もできたと思うのだ。いわばアマチュアとプロの分水嶺、専門家としての自覚を促してくれたのがサニーブライアンだったというわけである。

今年も二冠馬が誕生するのか?

 あれから18年の歳月が流れた。35歳でダービージョッキーになった大西直宏騎手を遥かに上回る年齢になって自問自答してみる。サニーブライアンの二冠はフロックだったのか? いやそうでないと今は確信をもって言える。ダービーの走破タイム2分25秒9はその時点で1991年の二冠馬トウカイテイオーと並ぶ歴代4位。その後、二度とターフに姿を見せることはなかったが、ダービーで後塵を排した馬たちが後に有馬記念や春の天皇賞、宝塚記念などで大活躍したことを考えても好メンバーが揃った中での価値の高い勝利だった。無事ならディープインパクトに先立つ「史上の6頭目の三冠馬」も決して夢ではなかったはずだ。

 サニーブライアンは2000年にJRA主催の「Millennium Campaign」で公募された「20世紀の名馬100」では堂々の28位に選出された。月刊誌『優駿』による「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」の2010年版と2015年度版でもそれぞれ72位と77位にランキング入りを果たし、歴史はフロックでないことを証明した。ダービーの動画や引退までの経緯、種牡馬としての実績も今やJRAレーシングビュアーやGoogleで検索すれば簡単に見ることができる。機会があればぜひご覧いただきたい。

 さて今年のダービーで二冠馬は誕生するのか? 簡単に答えが出せないのはここまで書いてきた通りだ。まだ少しだけ時間は残されている。じっくりと下調べをして当週の取材にあたり、予想も馬券も的中といきたい。

那谷明弘

筆者:


1970年神戸市生まれ。慶応大学文学部卒。95年入社。美浦で時計班として所属したのち、96年秋から栗東トレセンで取材を担当。夏の小倉出張は10年を越える。予想は「競走馬の強さはラップに現れる」、馬券は「血統と確率論の理解が必須」がモットー。

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