想像以上の激流「58秒6」 味方に付けたモズアトラクション

佐藤直文 レース回顧
エルムS

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重賞初Vは小回りコースで モズアトラクション

 ハナへ行きたい馬がズラリと揃って、ある程度のハイペースが予想されたとはいえ、テンの3ハロンが34秒5、前半1000mが58秒6という芝並みのラップは想像以上だった。逃げ・先行馬が断然有利のコース形態であっても、この流れでは結果も当然と言えただろう。

 モズアトラクションは、序盤は例によって後方で脚を溜める形だったが、縦長で馬群がバラける展開となったことで、勝負どころからロスなくインを回って追い上げることができた。その展開がハマったとはいえ、自力で動いて長く脚を使って抜け出した内容は十分に評価できる。脚質的にも向いているとは言えない小回りコースでの重賞制覇は、今後に向けても大きな糧となったはずだ。

 2着ハイランドピークは、これまた道中で内に潜り込んで、勝ち馬同様に巧く内から追い上げることがでっきたもの。昨年のこのレースを勝ってからは鳴かず飛ばずだったとはいえ、コース適性の高さと復調ぶりを窺わせる走りだった。

 3着サトノティターンは、展開が味方したとはいえ、上位2頭とは対照的に外を回って追い上げたことを考えれば、力を示すに十分な走り。プラス10キロで自己ベストを更新した馬体も、まだ成長中の証であり、これまた今後が楽しみである。

 4着レッドアトゥもまた、外を回って追い上げる形だったが、牡馬相手での重賞初挑戦でこれだけやれるのなら、牝馬のタイトルは楽に手中にできそうだ。

 5着リアンヴェリテは、内枠に行きたい馬が揃っていた中での大外枠で、主張してもハナを切ることができなかったが、序盤であれだけ脚を使って掲示板に残ったのなら負けて強しである。今後も同型との兼ね合いが鍵となるだろうが、控えて揉まれる形でも力が発揮できるかが課題となるだろう。

 タイムフライヤーは、今日の流れを先団で運んで、直線半ばでは一旦は先頭に立つかの見せ場もあった。初ダートでこれだけ走れたのは適性があるからこそであり、路線継続なら目が離せない。グリムは、このハイペースで控えたのは正解だったとしても、勝負どころでの反応が一息だった。控えたとはいえ速い流れで脚が溜まらなかった印象も受けたが、正攻法の方がいい馬なのかもしれない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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