早めのペースアップで快逃 福島巧者マルターズアポジー

佐藤直文 レース回顧
福島記念

あれよあれよの一人旅 マルターズアポジー大金星

 序盤に主導権争いもなく、前半1000m61秒0のスローぺースだったが、後続の差し馬勢が勝負どころで牽制し合ったのか、前に迫る馬がおらず、直線を向いたところでもかなりのセーフティリードに。最後は勝ち馬の脚も上がっていたとはいえ、危なげのない逃げ切りだった。

 マルターズアポジーはそんな展開が全てだったとはいえ、3コーナー手前あたりから少しピッチを上げたことにより、後続の早目の追い上げを封じたと見ることもできる。条件戦を連勝してきた上り馬だったが、3歳時にはラジオNIKKEI賞で逃げ粘っての3着もあったコース巧者であり、走られて不思議のない馬でもあった。

 2着ゼーヴィントは、前を見る形で運んで最後もよく脚を伸ばしていたが、結果的にはもっとマクり気味に動いて行かなければいけなかったか。菊花賞をパスしての臨戦で、勝利が至上命令だったことを考えても、消極的な乗り方が惜しまれる。

 3着ダイワドレッサーは、道中の位置取りを考えれば、よくここまで差してきたと言えるが、ラジオNIKKEI賞ではゼーヴィントの2着だった馬であり、コース適性は十分に示した形だ。

 4着マイネルハニーは、勝ち馬にハナを譲っての2番手で折り合えていたが、3コーナーでのペースアップに自身が苦しくなったあたり、まだ力不足の感を受けた。それでも掲示板に残ったのは、展開の利があったということだが…。

 5着ケイティープライドは、中団から勝負どころでも動かずに直線に賭けたが、前が止まる流れではなかっただけに、これが精一杯だった。

 シャイニープリンスは、4角シンガリという絶望的な位置から、馬群を縫うようにして追い上げた脚には見どころがあった。今日は仕方のない結果とはいえ、こういう競馬ができるのなら、どこかで穴を開けそうだ。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。