もうひとつ上のステージでも 完全本格化モルトベーネ

佐藤直文 レース回顧
アンタレスS

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馬群を割って鮮やかV モルトベーネ

 アンタレスSは、1分50秒を切るタイムでの決着。前半1000mが61秒2のラップは少し速いか、とも思えたが、今の阪神ダートは良馬場でも水準以上の時計が出ているだけに、平均ペースでどこからでも来れる展開だったように思う。

 モルトベーネは、前を見ながら絶好位で運び、直線でもインで馬群を割って鮮やかに抜け出した形。ベストの距離、少し軽めのダートと、この馬にとっての好走条件が揃っていたと言えるが、今回はデムーロ騎手の好アシストもあった。5歳にしてようやくの重賞初Vだが、レースぶり自体も安定してきているだけに、もうワンランク上の馬たちとの戦いでも目が離せないだろう。

モルトベーネ

ディープスカイ産駒のモルトベーネ(黄帽)が重賞初V(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ロンドンタウンは、道中は中団馬群で脚を溜め、直線では残り1ハロンを切ってから進路を見つけて脚を伸ばしたもの。乗り難しい面があって成績は安定しないが、巧く乗られればこれくらい走って当然の馬だ。今後、キャリアを積むことにより、かなりの活躍も見込めるだろう。

 3着ロワジャルダンも、中団のインでジックリと脚を溜める競馬。4コーナーあたりでの手応えも抜群だったが、並んでいた2着馬とは対照的に前が開かず、ようやく最内に進路を見つけて猛追したが届かなかった。脚質的に仕方ないとはいえ、復調は示す内容だったように思う。

 4着リーゼントロックは、以前はハナか2番手で、というのが好走条件だったが、今日のような好位で流れに乗る形の競馬が完全に板に付いた。2着とはタイム差なしに踏ん張っていただけに、重賞でもどこかでチャンスがあるはずだ。

 5着アスカノロマンは、道中は勝ち馬と同じような位置取りで、先に仕掛けて一旦は先頭に立つ形だったが、速い上がりの決着では分が悪かったか。この馬にとっては、もっと厳しい流れになってほしかったところだろう。

 グレンツェントは、中団の後ろをおっつけおっつけでの追走。速い時計の決着やコースも合わなかった印象を受けるが、58キロの斤量も影響したか。ミツバは、今日は後方から、という相変わらずの極端な競馬だったが、オープン特別レベルならこの競馬でも通用するが、重賞ではそうはいかない。前走のような先行策とは言わないまでも、早目進出などの工夫が欲しかった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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