キタサン集中途切れて敗戦 サトノクラウンがダイヤモンドの敵討ち

佐藤直文 レース回顧
宝塚記念

これが世界を制した脚 サトノクラウン

 道悪でも、同じ稍重発表だった昨年よりはマシと思えた馬場だったが、2分11秒4は想像以上に速い決着タイムであった。前半1000mこそ60秒6と馬場を考慮しても遅めだったが、そこからラスト2ハロン目まで11秒台のラップが続く流れは、先行勢に厳しい展開だったと言えよう。

 サトノクラウンの勝因として、まず第一に取り上げたいのは馬体の回復だ。前走の大阪杯では大きく馬体を減らしての出走となったが、その失敗もふまえて同じ関西への輸送競馬でもキッチリと馬体を戻してきたのは、厩舎の力に他ならない。そして第二はデムーロ騎手の騎乗ぶり。ペースが緩んだ向正面で一旦動いてキタサンにプレッシャーをかけた上で、スッと引く。ダービーでのルメール騎手もそうだったが、道中で一旦仕掛けて止めるテクニックは脱帽モノである。今日のような馬場も合っている馬だが、それにしても見事な立ち回りが勝利を呼び込んだと言えるだろう。

サトノクラウン

国内のGIは初制覇となったサトノクラウン(桃帽)(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ゴールドアクターは、道中で同じ位置にいた勝ち馬の仕掛けに動じることなく、折り合いに専念。直線では、馬場のいい外目に殺到する他馬を尻目に、空いたインをついて伸びてきた。テンから行く構えも見せていなかっただけに、これは厳しい流れを見越した鞍上の作戦であったろう。そんな好騎乗に加えて、状態も春2戦と比べて大幅に良化しての好走であった。

 3着ミッキークイーンは、後方でジックリと構えて、残り3ハロンの地点から仕掛けて追い上げる自分の競馬に徹した形。道悪とはいえ滑るような馬場ではなかったので、持ち前の瞬発力を生かすことができたように思う。

 4着シャケトラは、スタートが決まったこともあって無理に控えず2番手で運んだ形だったが、先行勢には厳しかった今日の流れを考えれば立派な内容だ。特に、3角過ぎから並んで仕掛けてきたキタサンに対して、一度も交わされることなくポジションを守った点は評価すべきだろう。まだ良くなるのは先の4歳馬であり、今までにない競馬を経験したことで、秋が楽しみになったと言える。

 5着レインボーラインは、勝負どころから仕掛けて、4コーナーでは勝ち馬の外で手応えも良く映ったが、そこからスパッとキレる脚を使えなかった。ただ、これまた4歳馬であり、秋にはもうワンランクの成長した姿を見せてほしい。

 そしてキタサンブラック。今季GI3戦目で、しかも天皇賞レコード走の反動を考えれば、必ずしもピークの状態での出走ではなかったことは確かだが、それが敗因として片付けられないことも確かだ。ここ数戦とは違って外枠を引き、まさか行くとは思わなかった2頭の出現により最初のコーナーを3番手で回る形。その後も勝ち馬にプレッシャーをかけられるなど、けっして思い通りの競馬ではなかったはず。ただ、この形でも勝てると、私自身も思っていたし、武豊騎手もそう思っていただろう。いずれにせよ、理想とする4角を先頭で回る形を取れないまま、後続に呑み込まれてしまったあたり、厳しい流れのみならず、馬自身の集中力も切れてしまったように映った。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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