前半33秒3で強味生きたアルクトス 5着マテラスカイは「やはり脆さが…」

佐藤直文 レース回顧
プロキオンS

4歳馬のワンツー決着 世代交代の予感も?

 不良馬場で行われた昨年は驚愕の日本レコードが飛び出したが、その昨年は前半600mが33秒5。一方、稍重で行われた今年はその前半600mが33秒3と前年よりも速く、時計的な価値は決して見劣るものではなかったと言えるだろう。

 アルクトスは、好位から巧みに内に潜り込み、理想的なレース運び。直線は逃げ馬の外へ進路を切り替え、強引に抜け出す形にはなってしまったが、そこに至るまでの手綱捌きは見事だった。力を付けているのは確かで、淀みない流れになってバテない強味も生きた。小回りの交流重賞ですぐに結果が出るかは微妙だが、東京コースで行われる武蔵野SやフェブラリーSでの活躍が見込める1頭。

アルクトス

強引に抜け出してきたアルクトス(緑帽)が重賞初V(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ミッキーワイルドは、勝ち馬と同様にレース展開がピタリ。ただ、その勝ち馬とは位置取りの差が出た部分もあったが、それでも半馬身差まで詰め寄っており、強い競馬だったと言えよう。以前は適条件の定まらない所もあったが、左回りの1400m~1600mに的を絞って力を付けてきた。これがロードカナロア産駒の成長力か。

 3着ヴェンジェンスは、2着から2馬身離されたが、内容的にはこれまた強い競馬。揉まれ弱いので、今回の4番枠からでは出して行かざるを得ず、ハイペースに巻き込まれた分もある。外枠であればまた違った競馬も出来たか。阪神コースに良績が集中していた馬が中京コースでこのメンバーを相手に3着、展開を考えても高く評価できる。

 4着サンライズノヴァは、コーナーリングに課題のある馬で、コーナーの緩い東京なら34秒台の上がりが使えるが、それよりもタイトな中京では35秒台が精一杯か。ただ、今回のような流れになれば、地力のある所は示せた。得意の東京に戻れば面白い。

 5着マテラスカイは、冒頭で述べたように厳しい流れでの逃げになってしまった。流石のダッシュ力ではあったが、後続のプレッシャーがキツかった。もっと雨が降って欲しかったという所だが、やはり脆さもあるタイプ。昨年のような馬場なら惰性で粘り込むシーンもあったかもしれないが…。

 サクセスエナジーは、3着馬と同じく内枠だけに出して行かざるを得ない形。他の先行馬に比べてテンのダッシュ力で見劣る面があり、最後の直線では不利もあって恵まれない部分があった。交流重賞ならすぐに巻き返せるだろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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