1000m通過後に「特殊な流れ」 信じた川田、応えたメールドグラース

佐藤直文 レース回顧
小倉記念

トップハンデも何のその メールドグラース

 前半1000mが60秒4で、後半1000mが58秒4。これだけの数字を見ると普通のスローペースなのだが、1000m通過後の3ハロンで11秒5-11秒5-11秒6と極端にペースアップした特殊な流れで、そこで動いた馬には厳しい展開となった。

 メールドグラースは、スタートで少し後手を踏んでの待機策だったが、前半のスローペースでも慌てず騒がず、勝負どころから巧く外へ持ち出し、直線まで脚を温存して使わせた川田騎手の見事な騎乗ぶりだった。ハンデを背負っていたことを考えれば、早目に仕掛ける選択肢もあったろうが、この馬の成長曲線を体感していた鞍上だったからこそ、力を信じての騎乗ができたのだろう。秋の大舞台も本当に楽しみになった。

メールドグラース

大外から伸びたメールドグラースが重賞3連勝のゴール(撮影:日刊ダンダイ)

 2着カデナは、相手を勝ち馬に絞ったかのような直線勝負で、一番最後に脚を使って勝ち馬を追い詰めたもの。ここ2戦で示していた復調ぶりも本物だったと言えるが、本質的には距離がもっとあった方がいい馬かもしれない。

 3着ノーブルマーズは、絶好位と言えるスローの3番手だったが、前述したように勝負どころから勝ちに動く形はけっして楽ではなかった。最後に目標とした4着馬を捉えた走り自体は評価できよう。

 4着タニノフランケルは、ハナを主張せずに2番手からの競馬。スローの瞬発力では分が悪く、ハイペースで後続に脚を使わせる形の方がいいと思える馬だけに、何故ハナへ行かなかったのか、という疑問が残る。

 5着クリノヤマトノオーは、勝負そころから馬群がバラけたこともあって、内目を手応え良く進出したが、直線では弾けなかった。どう乗られてもワンパンチ足りないか。

 アイスバブルは、ペースアップした中盤以降に仕掛けられた分、直線で伸びを欠いた形。小回りの2000m自体も少し忙しいかったか。アイスストームは、中団で流れに乗り、直線を向いたあたりでも手応えはあったように思えたが、ここ2戦で見せた末脚は影を潜めてしまった。プラス6キロの馬体はけっして重目残りには見えなかったが…。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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