待ってろキタサン! イン突きVタンタアレグリアが盾戦線へ名乗り

佐藤直文 レース回顧
アメリカJCC

プラス12キロは成長分 タンタアレグリア

 例年であれば主役となる有馬記念出走組が、今年は不在。先週の日経新春杯にも言えたことだが、今年から大阪杯がGIに昇格したことにより、有力古馬のローテーションにも変化が見られ、このレースの傾向なども変わってくるのではないだろうか。ただ、そんなメンバー構成であっても、決着タイムの2分11秒9は過去10年で最も速いもの。荒れてきた連続開催最終週の馬場を考えればかなり優秀であり、上位馬はハイレベルだったと言っていい。

 タンタアレグリアは、道中でうまくインに潜り込み、3コーナー過ぎの勝負どころからも抜群の手応えで進出して、直線でもバテた逃げ馬と3着馬の間をズムーズに割って抜け出したもの。これまでのレースぶりを考えると、意外なほどの器用さを見せた形だが、人気を落とす要因ともなっていた8ヶ月半ぶりでプラス12キロの馬体も、そっくり成長分だったと言える。菊花賞や天皇賞では届かなかったキタサンブラックとの差も、かなり縮まっているのではないだろうか。

タンタアレグリア

内を突いたタンタアレグリア(青帽)が重賞初制覇(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ゼーヴィントは、勝負どころから外を回って動いて、直線の坂下では先頭に立ったもの。勝ち馬にはインをすくわれる形で屈したが、これは外を回った分の差で仕方がなく、力は出し切ったと言える。この時計の決着で、これだけの走りを見せたのなら、重賞2勝目もそう遠くはないはずだ。

 3着ミライヘノツバサは、淀みないラップで飛ばした逃げ馬を追いかけて、4コーナーでは先頭に立つ自分の競馬に徹した形。上位2頭の決め手にこそ屈したが、納得の行く3着であり、先行馬に厳しい流れだったことを考えても、力を示す内容だった。

 4着ルミナスウォリアーは、後方から大外を回ってスパートして、直線でも十分に見せ場を作った。もともと相手なりに走る堅実味が売りではあるが、GIIでも掲示板を確保できたあたりが目下の充実ぶりを示していると言える。

 5着ワンアンドオンリーは、勝負どころで無駄に動かずに、直線でもロスなくインから差を詰めた形。ただ、勝ちに行っての入着ではなかっただけに、まだ完全復活は先と見ていい。

 リアファルは、3着馬と一緒に前を追いかける形で運んだが、勝負どころで一早く脱落したもの。気性的に二走ボケするタイプではなく、心肺機能の面に何か問題があったとしか考えられない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。