流れに乗ってのイン強襲 覚醒したルージュバックが悲願のGI獲りへ

佐藤直文 レース回顧
オールカマー

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1頭分のスペースから矢のような伸び ルージュバック

 近走では好位に控える競馬を続けていたマイネルミラノだが、今日のメンバーでハナへ行ったことはある程度予想されていたことだった。ただ、絡んでくる馬がいなかったことで、前半1000mは63秒1の超スローに。結果、レースの上がりが34秒8という速さでは、後方から運んだ馬に出番はなかった。

 ルージュバックは、好スタートを切ったあとも馬の行く気に任せて好位のインで流れに乗る形。中山コースを意識したのだろうが、ジョッキーが替わればこんな競馬ができるのか、というのが正直な感想だった。4コーナーでは外へ持ち出すことができず、そのままインを狙ったが、最後はラチ沿いの1頭分のスペースから矢のような伸び。その4コーナーで外へ出そうとした際に、他馬の進路を妨害して北村宏騎手は開催2日間の騎乗停止処分を受けたが、そこで無理をしなくても勝てたわけであり、その一点を除けば実力馬を覚醒させた実に見事な騎乗だった。このあとは天皇賞に向かわず、エリザベス女王杯一本に調整されるとのことだが、今日のような流れに応じた自在性が身に付いたのなら、馬自身も完成の域に達したと見て良く、悲願のGI奪取も現実味が帯びてきたと言える。

ルージュバック

イン強襲で重賞4勝目をあげたルージュバック(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ステファノスも、好位で流れに乗って、セーフティリードかと思われた逃げ馬をゴール前でしっかりと捕らえたもので、レースぶり自体は上々だった。これまでは、休み明けは一息で叩いて変わる、というタイプだったが、今回は中間の調教パターンを変えるなど、陣営も力を出せるデキに仕上げてきた印象。ただ、叩き良化の本質に変わりはないはずで、これまたタイトル獲得へ視界が開ける内容だったと言える。

 3着タンタアレグリアは、同舞台だった年明けのアメリカJCC勝ちのイメージで、勝負どころから仕掛けて行ったものの、やはり以来8ヶ月ぶりの分、反応が遅れてしまった形。ただ、久々でこれだけ走れば上等と言える内容で、このあと順調ならこれまた大舞台での期待が持てる。

 4着マイネルミラノは、スローのマイペースで運び、勝負どころの残り4ハロン目と3ハロン目で、11秒3、11秒2と一気に加速して後続を引き離したもの。ゴール寸前で捕まったものの、持ち味は十二分に発揮した形だ。

 5着ショウナンバッハは、道中は後方で脚を溜め、直線でもスムーズに外へ持ち出してゴール前では一番の伸び脚で、久々にこの馬らしさを見せた。GIIIレベルの重賞なら、まだどこかでチャンスがあるかもしれない。

 アルバートは、4コーナーで不利があったとはいえ、スタミナが要求される競馬にならなかったことが最大の敗因だろう。同じことがモンドインテロにも言えるが、道中はともかくとして4コーナーの位置取りも絶望的だった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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