混戦を断ったベテランの腕 3歳ミスパンテールが重賞初V

佐藤直文 レース回顧
ターコイズS

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一級品のキレ味で ミスパンテール

 テンの3ハロンが35秒9と遅めの入りだったが、以降は淀みなく流れ、けっして速くはないが極端なスローでもなかった。力を余した馬もいたものの、ある程度、各馬が力を出し切れる展開だったように思う。そんな中で勝負を分けたのは、どこで脚を使ったかであろう。

 ミスパンテールは、中団後ろ目の馬群でジックリと脚を溜めて運び、直線を向いても無理に外へ持ち出さず、馬群の中でジッと進路を探す形。その進路が開いたのは坂の途中の残り150mほどの地点だったが、溜まっていた脚を一気に爆発させての重賞初V。直前の10Rでも追い込み馬で逃げ切り勝ちを演じるなど、ベテラン健在ぶりをアピールしていた横山典騎手だったが、最後の最後に脚を使わせた腕の冴えが光る騎乗ぶりであった。馬自身にも、課題のイレ込みが軽減されて落ち着きがあったのが勝因のひとつと言えそうで、このテンションでレースに臨めるのなら、一級品のキレ味をもうひとつ上のステージでも遺憾なく発揮できるはずだ。

ミスパンテール

最後の最後に脚を使ったミスパンテール(青帽)が優勝(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着フロンテアクイーンは、勝ち馬よりは一列前のポジションで運んでいたが、同じように直線で進路を探す形ながら、勝ち馬よりも先に前が開いて一気に脚を使ったもの。完全にハマッたと思えたが、勝ち馬に標的となってのクビ差負けは仕方なく、この馬らしい競馬はできたように思う。これで3度目の重賞2着だが、牝馬同士のGIIIならいずれ勝機が訪れるはずだ。

 3着デンコウアンジュは、外枠で自分の競馬ができていて、直線でも外から突き抜けるかの勢いで伸びたもの。上位2頭とは外を回った分の差と言えるが、ハンデの差もあったか。ただ、小回りコースでも結果を出せたことで、今後の選択肢も広がることだろう。

 4着ラビットランは、3角を過ぎてマクリ気味に進出した5着馬と一緒に動く形だったが、最後に伸びを欠いてしまった。このあたりは一息入って2ヶ月ぶりの影響もあったろうが、直線を向くまでジッとしていればあるいは、という感も受けた。

 5着エテルナミノルは、出遅れて後方から運び、3角から外を回って長く脚を使ったもの。本来の競馬ができなかったとはいえ、これでコンマ1秒差なら強い競馬ではある。これまたGIIIなら勝てるレベルだろう。

 ワンブレスアウェイも、5着馬同様に出遅れたが、内枠だったこともあって全く流れに乗れなかった形。今回は参考外の一戦と見ていいだろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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