【フェブラリーS回顧】坂井レモンポップ“世間の危惧”もなんの 4着ドライスタウトは「力の差」

佐藤直文 レース回顧
フェブラリーS

冷静沈着に導かれ レモンポップが一気に頂点へ

 半マイル通過46秒6のラップは、このレースとしては極端に速いものではなかったが、それでも前の組にとってはけっして楽ではない流れ。その状況下で、好位から楽な手応えで抜け出して1番人気に応えた勝ち馬は、春を思わせる陽気の中、新たな王者が誕生したダート界にも春を告げたと言えよう。

 そのレモンポップ。厳しい流れだったとはいえ、この馬にとってはむしろ理想的な形で、好位を何のストレスもなく追走することができた。前走の根岸Sでのラスト1ハロンの失速ラップから、1ハロンの距離延長を危惧する向きもあったが、直線でギリギリまで追い出しを遅らせたことにより、最後までしっかりと脚を使っての完勝だった。調教で感触を掴んでいたとはいえ、レースで初騎乗ながらこれだけ冷静沈着な手綱捌きを見せた坂井騎手も巧いの一言。今回は不在だったもうワンランク上の相手との戦いでも、楽しみとなるコンビだろう。

レモンポップ

テン乗り坂井騎手に導かれた5歳馬レモンポップが完勝のゴール

 2着レッドルゼルは、道中は後方でジックリと構えての直線勝負。流れも味方した感を受けたが、正直マイルは1ハロン長い馬が2着にまで来れたのは、それだけのメンバーレベルゆえかもしれない。

 3着メイショウハリオは、スタートをアオって出て直後に躓く大きな不利。久々の芝スタートが影響したかとも思えるが、ラストの伸びを見るにつけ実に勿体ない競馬だった。

 4着ドライスタウトは、マイナス12キロの馬体はもっと絞れてもいいくらいで状態は良く映り、距離もまた問題のない馬。それでいて道中は勝ち馬と同じ位置から突き放されたのなら、力の差と見るべきだろう。

 スピーディキックは、直線では進路を探しつつの形でけっして満足に脚を使えたとは言い難かったが、それでも6着まで来たのは立派だった。まだ伸びしろのある4歳馬でもあり、今後も中央での大舞台に挑戦して欲しいと思わせる走りだった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。