ハナ差でも文句なしの完勝 武豊に導かれ2度目のキタサン“まつり”

佐藤直文 レース回顧
天皇賞(春)

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平成の盾男に導かれ キタサン“まつり”第2章

 古馬最高峰の座を賭けた天皇賞・春。◎の期待に応えてくれたキタサンブラックの走りを堪能した一戦であったが、波乱を演出したカレンミロティックについては、優馬紙面の1面上、私のコラムの隣に掲載している持木秀康の“オフコース持論”から拾い上げてみたい。“阪神大賞典ではハナに立つ形になってしまったが、本来は前に目標を置いた方が良いタイプ。キタサンブラックが最内枠から逃げる形になれば理想的”と、まんまその通りの結果であった。予想上は▲◎○での決着で、座談会でのGI恒例1万円勝負でも、3連単を的中させて過去最高の払い戻し。まさに“持木あっぱれ”の予想であった。

キタサンブラック

一旦前に出られるも差し返したキタサンブラックがGI2勝目(白帽、撮影:日刊ゲンダイ)

 1000m通過が1分1秒8、2000m通過が2分3秒5というのは、最近2年とほとんど同じで、速くもなく遅くもなくの流れ。ただ、これを刻んだキタサンブラックにとっては、この上ないマイペースだったように思えた。この舞台を最も知る“平成の盾男”武豊騎手が、スタートをドンピシャに決めて、これだけ全くロスのないスムーズに運べたのであれば、最後は差し返してのハナ差勝ちでも、文句なしの完勝と言えるだろう。もちろん、馬の状態も素晴らしく、枠順も良かった。全ての面で噛み合って、淀で2度目の“まつり”となった。

 2着カレンミロティックは、持木の言を借りて前述したように、理想的な競馬ができた。マイペースで運びながら後続にも脚を使わせた勝ち馬の背後にピタリと付き、同じ形でも4角先頭だった昨年とは違い、相手をキタサンに絞ったスナイパーのようなレースぶり。これまた枠も良かったが、持ち前のスタミナをフルに生かしての激走であった。8歳馬ではあるが、今日のような理想の競馬ができれば、長距離路線ではまだまだやれるはずだ。

 3着シュヴァルグランは、中団でしっかりと脚を溜め、直線ではロスなくインを選択してよく伸びた。前走の阪神大賞典が初の重賞制覇であったが、このパターンは本番で凡走する例が多く、それを考えてもよく走ったと言える。2着馬もそうであるように、古馬になって益々の成長が見込めるハーツクライ産駒。今後が楽しみになる走りであった。

 4着タンタアレグリアは、後方から自分の形で運んで、上がり3ハロンは最速の数字。不向きな流れで届かなかったものの、内容は十分に評価できる競馬だった。1・3着とともに掲示板に載り、改めて4歳馬のレベルの高さも示したと言える。

 5着トーホウジャッカルは、3角から動いたゴールドアクターの後を追うように進出し、ラスト1ハロンの時点ではこのまま突き抜けるかと思わせたほど、見せ場十分の競馬だった。ただ、復調も示す内容ではあったが、まだ完全には立ち直っていないようにも思える。順調に使い込めるようになれば、と言ったところだが、今後も脚元との厳しい戦いが続くかもしれない。

 アルバートフェイムゲームといった後方待機組は、流れを考えてもこれが精一杯。1番人気ゴールドアクターは、どこかでインに潜り込みたかったのだろうが、結果的に終始外々を回らされる形。自分で勝ちに動いて、直線でも一旦は勝ち馬に並びかけるシーンを作ったのだから、着順ほど大きく評価は下がらない。枠順も厳しかったし、京都コースの適性も一息の気がするが、7分程度のデキで勝った前走の反動も少なからずあったのではないだろうか。積極的に前で運んだサウンズオブアースは、勝負どころで手が動いて真っ先に脱落。距離や状態の問題はなかったと思えるだけに、位置取りはどうであれ、脚を溜める形にならないとダメな馬なのかもしれない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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