コントレイル「次なる壁」は… ルドルフや父ディープは超えられず

佐藤直文 レース回顧
菊花賞

苦しみ抜いての偉業達成 コントレイル

 GIで単勝1.1倍のオッズは、そうそうお目にかかれるものではない。これほどの支持を集めたのは、単勝支持率79%で結果的に単勝は100円の元返しとなった2005年のディープインパクト以来である。勝って当たり前、誰もが無敗での三冠達成を信じて疑わない中で、鞍上に福永騎手には相当なプレッシャーがあったことだろう。ウイニングランを終えて引き上げてきた際の、喜びというよりも安堵の表情が、それを物語っていたように思う。

 そのコントレイル。前半1000m通過62秒2は、スローではあるが思ったよりも流れた印象を受けたが、道中で少し力む面を見せながらも、好位から早目に動く形。直線を向いて、道中からピッタリとマークされていた2着馬の抵抗に苦しみ、一旦は相手の勢いが勝るかのシーンもあったが、最後まで先んじることを許さずに勝ち切った。サリオスとのマッチレースを制した皐月賞以上に、これまでで最も苦しんでの勝利であったが、これは正直3000mがこの馬にとって長かったためであり、それでも負けなかったあたりが強さの証明だろう。これまで無敗で三冠を達成したシンボリルドルフと父のディープインパクトは、いずれも三冠達成直後のレースで連勝が止まった。次は、史上最強クラスの名馬ですら超えられなかった壁へのチャレンジが待ち受けている。

コントレイル

最後まで抜かせなかったコントレイル(奥)が無敗の三冠を達成

 2着アリストテレスは、前述したように道中から勝ち馬の外へピッタリと馬体を併せ、他の馬など眼中にないかのような強気のレースぶり。鞍上の手が動くのは勝ち馬よりも早かったが、それでいてここまで苦しめたのだから、敗れたとはいえ最大級の賛辞を送りたい。

 3着サトノフラッグは、折り合い重視で後方からジックリと運んでの直線勝負。上位2頭からは3馬身以上の水を開けられたものの、春からの成長は示した形だ。

 4着ディープボンドも、同様に成長を示すレースぶり。前々で運んで渋太さを発揮する形で長距離の適性はアピールできたように思う。

 ヴェルトライゼンデは、上位2頭を前に見る理想的な形で運びながら、伸びを欠いたもの。前走は順調さを欠いての臨戦だったが、その後の調整も難しかったのかもしれない。バビットは、2番手からでも競馬ができる、という陣営の言葉通りの展開だったが、やはりハナへ行ってこそのタイプ。加えて、距離も長かったか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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