箱に残った“希望”をこの舞台で ショウナンパンドラが女帝の歴史を継ぐ

【佐藤直文 先週のレース回顧】
日本馬が9連勝中だったジャパンカップ。今年は4頭の外国馬を迎え撃つ形となったが、ゴール前の混戦をクビ差制したのは、最近6年で牝馬4勝のデータ通り、ショウナンパンドラだった。

佐藤直文 レース回顧
ジャパンカップ京阪杯京都2歳S

盾の借りを返した ショウナンパンドラ 【ジャパンカップ】

 日本馬が9連勝中のジャパンカップだったが、それ以前の歴史を見ても、けっして日本のエース格である1番人気馬の信頼度は高くない。今年はのそのラブリーデイが頭一つ抜けて、それ以外で単勝10倍を切ったのが5ヶ月ぶりのゴールドシップと牝馬2頭。例年ほどのレベルではなく、日本の馬場への適性や状態次第では外国勢にチャンスがあると思ったのだが…。

 カレンミロティックが刻んだ1000m通過59秒3というラップは遅いものではなかったが、離し逃げだったこともあり、馬群は平均かそれ以下のペースで流れた。最初のコーナーでゴチャ付いて、以降も馬群は入れ代わり立ち代わりで、ストレスの溜まる形に。レースの上がりこそ35秒3と速くはないが、15着までがコンマ6秒差に入線したように、結果的に瞬発力がモノを言う勝負となった。

 ショウナンパンドラは、前走の天皇賞では、持ち前の瞬発力が生かせない流れだったこともあったが、15番の枠なりに外を回る形も響いたもの。対して今回は同じ15番枠でも、序盤から積極的にポジションを取りに行って流れに乗り、そして瞬発力勝負になったことが勝因と言える。その天皇賞では◎を打っていただけに、予想上の悔いはあるが、見立てが間違っていたのではなかったわけだ。ミッキークイーンとは対照的に前走から馬体を増やしての出走となったことも、オールカマーからの始動でうまく調整ができたということだろう。

ショウナンパンドラ

馬群を割って力強い伸びを見せたショウナンパンドラが優勝(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ラストインパクトは、内ラチ沿いからスルスルと脚を伸ばしたが、ラブリーデイが先頭に立ったあたりで一旦はそこまでかと思わせながらのもうひと伸び。うまく立て直されてきたことも確かだが、やはりムーア騎手の腕。直前のレースでもインにこだわる騎乗を続けており、イチかバチかではなく、勝ちに行ったイン狙いだったように思う。

 3着ラブリーデイは、スムーズなレース運びであったし、4コーナーで内がゴチャつくのを嫌って外目に出す判断も間違いではなかったように思える。早目に先頭に立つ形も天皇賞と同じであったが、最後に伸び負けたのは、やはり東京2400mは気持ち長いのか。次走の有馬記念はもう100m距離が延びるが、こちらは全く異質の舞台だけに距離の心配はないだろう。むしろ、体調をキープできるかが鍵となりそうだ。

 デビュー以来初めて連を外したミッキークイーンは、終始モマれる厳しい形。そういう競馬に対応できるだけの体力が付き切っていなかったということだろう。今季はここまでだったが、もうワンランク馬体の成長があれば、来年は牡馬相手でも互角に戦えるはずだ。

 ゴールドシップは、久々や東京コースよりも、今回は瞬発力勝負となったのが全てだろう。それでも、3角から大外を回って動いてコンマ4秒差なら、10着という着順ほど悪い内容ではなく、ラストランとなる有馬記念へ向けての光明は見えた。

 ◎に推した外国馬イラプトは、4コーナーでの反応が一息でモマれてしまったのが痛かった。キャリアの浅さも出たと思えるが、日本の馬場の適性は示した走りで、スムーズだったらと惜しまれる。他の外国勢は、逃げたかったイトウがハナへ行けず、他の2頭も瞬発力勝負では出番のないタイプだったか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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