ルメールには「お見事と言うしかない」 “直前降雨”も明暗分ける

佐藤直文 レース回顧
クイーンS

後方待機から馬群を貫き テルツェット

 直前の降雨により、良発表のままではあったが見た目にも渋った馬場。けっして縦長の展開ではなかったが、そんな馬場状態で12秒前後のラップが続く淀みないペースは、差し馬向きの流れだったと言える。その展開を読んでの道中の位置取り、そして直線を向いての進路取り。勝ち馬の鞍上ルメールJの手綱捌きには、お見事と言うしかなかった。

 そのテルツェットは、思わぬ大敗を喫した前走のヴィクトリアマイルから、しっかりと立て直されてきた印象。同じ後方からの競馬でも、出遅れではなくスタートを決めて余裕を持って追走できたことで、十分に脚を溜めて運ぶことができた。前述したように鞍上の好アシストもあったことは確かだが、距離への対応と思った以上の器用さも見せたことで、今後の選択肢も大きく拡がることだろう。

 2着マジックキャッスルは、好位から磐石の競馬ができたが、最後は勝ち馬に目標とされて決め手に屈した形。1キロ重い斤量の分もあったろうが、直前の雨もけっしてプラスとは言えず、その状況下で力はしっかりと示した。

 3着サトノセシルは、前走は逃げ切りだったが、しっかりと脚を溜める競馬でよく脚を伸ばしたもの。今日のような少し時計のかかる馬場であれば、いずれ重賞に手が届いても不思議はないだろう。

 4着フェアリーポルカは、好位のインをうまく立ち回って直線でも見せ場を十分に作ったが、ラストの決め手勝負で遅れを取ってしまった。もっと時計のかかる馬場の方がいいタイプだろう。

 惜しかったのはイカット。直線で逃げた馬と4着馬の間を割ろうとしたところで狭くなってブレーキがかかってしまったもの。スムーズだったらあるいは、と思えただけに、少なくとも自己条件に戻れば確勝級だろう。ドナアトラエンテは、結果的には前に行き過ぎたとも言えるが、道悪で勝っているとはいえけっして巧者ぶりを発揮したものではなかっただけに、今日の馬場も合わなかったかもしれない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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