モーニン完勝も、本番フェブラリーSでは“ちょっと待って” 

佐藤直文 レース回顧
根岸S

仕切り直して完勝劇 モーニン

 この東京の最終週に組まれているフェブラリーSの前哨戦、という位置付けだが、このレースの結果が本番に結びつかない傾向がある。もちろん、別路線から参戦する有力馬が多いためでもあるが、僅か1ハロンの違いとはいえ、東京の1400mダートと1600mダートでは要求される資質が違うと言える。あくまで、このレースにおいては東京1400mダートのスピード勝負に特化した馬が好走する場であろう。

 前半の3ハロンが34秒6と、脚抜きのいい馬場を考えればそれほど速くはない流れ。モーニンは、ややスタートのタイミングが合わなかったものの、無理なく絶好位に収まることができ、前走のように力むところもなかった。しかも、前走で先着を許したタガノトネールを大名マークする形。余力十分で直線を向き、早目に先頭に立って後続を封じる横綱相撲であった。プラス10キロの馬体も全く太くは見えず、むしろパワーアップした印象。2着では賞金的に厳しかったフェブラリーSへの優先出走権も獲得し、本番でも有力の一頭となるだろうが、それについては冒頭でも記した通り“ちょっと待って”と、言わざるを得ない。スピードの絶対値だけでクリアできる舞台ではないし、3着と敗れた武蔵野S時と同じ中2週での再輸送にも精神面での不安が残る。あとは、それらを超越する“化け物”であるか否か、だろう。

モーニン

危なげない競馬で人気に応えたモーニン(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着タールタンは、持ち前の自在性を生かして巧く流れに乗って運び、交わせる脚色ではなかったものの、勝ち馬に半馬身差まで迫った。過去にはコースレコードタイの時計もマークしている東京1400mダートで、まさに特化したスピードを見せたと言えるが、8歳を迎えても全く力に衰えはなく、条件さえ揃えば今後もチャンスは訪れるはずだ。

 3着グレープブランデーもまた、衰え知らずの8歳馬。前で運んで展開も味方に付けたことは確かだが、58キロを背負ってこれだけの高速決着に対応できたのは立派の一言だ。理想とする時計のかかるダートであれば、今後も重賞戦線でうるさい存在となるだろう。

 4着タガノトネールは、本来は1400mがベストの馬なのだが、ここ2走で1600mを使ったためか、少しゆっくり運び過ぎた印象。今回のような瞬発力勝負では分が悪いだけに、結果論かもしれないが、もっとガンガン行くべきだったのではないか。

 5着アンズチャンは、自分の競馬に徹したが、今日は流れが向かなかった。上がり3ハロンは自身最速の34秒4をマーク。力は重賞でも足りるのだが、今後も展開次第の馬だろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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