【アイビスサマーダッシュ回顧】“ガッカリ時計”の電撃戦でも、キラリ光った「代打ジョッキー」の手綱捌き

佐藤直文 レース回顧
アイビスサマーダッシュ

乗り替わりでの鮮やかなリベンジ オールアットワンスが再び直線女王の座に

 同じ直線1000mで行なわれた土曜日の1勝クラスが、レコードにコンマ2秒まで迫る53秒9という決着。当然ながら、2002年にカルストンライトオがマークした53秒7の更新も期待された一戦であったが、終わってみれば54秒9というレコード更新はおろか、1勝クラスよりも1秒遅い決着となった。展開などはあってなしの如くの電撃戦でのこの時計は、今年のレベルが低かったと言わざるを得ないだろう。

 オールアットワンスは、昨年のこのレース以来となる丸一年の休み明け。奇しくも昨年と同じく不利な3番枠を引いたが、スタート直後の前の大集団を見ながら、後方から労せずして外ラチ沿いの進路を確保したもので、先に抜け出した2着馬を目標にして鮮やかに抜け出し、一昨年以来の復活Vを果たした。落馬負傷のホー騎手から急遽の乗り替わりとなった石川騎手だが、過去2回とも手綱を取ったこの舞台での主戦騎手でもあり、イン強襲策が裏目に出た昨年の結果をふまえると、自身にとってもリベンジとなる絶妙の手綱捌きであった。

オールアットワンス

オールアットワンス(黒帽)と石川騎手のコンビが、9番人気の低評価を覆しこのレース2勝目

 2着トキメキは、思い通りのポジションから勝ちパターンの競馬ができたが、残り1ハロンで早目に前が開いたところで抜け出す形となり、勝ち馬の目標となってしまったもの。もう少し我慢できていればといったところだが、自分の力は出し切れたか。

 3着ロードベイリーフは、内枠を引いたことで出して行かずに勝ち馬と同じく後方から外へ進路を確保する形。勝負どころからは密集する外を避けて再び馬場の中ほどへ進路を切り替えて前に迫ったが、外枠を引いてもっとスムーズな競馬ができていれば、際どい勝負に持ち込んでいたかもしれない。

 4着サトノファビュラスは、初の直線競馬でソツのない立ち回り。適性は十分に示したと言えそうだ。

 ジャングロは、初めての舞台でもけっして速さ負けすることなく立ち回ったが、今日のところは長期休養明けの分だろう。シンシティは、2着だった昨年同様に外枠を引いてハナを切ることができたが、走破時計を見ても昨年当時の状態ではなかったか。ファイアダンサーは、出遅れもあったとはいえ全く進んで行かずのシンガリ負け。万全の体調ではなかったかもしれないが、少々人気になり過ぎだったことは確かだ。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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