“ダービーポジション”から手繰り寄せた“運“ マカヒキが世代の頂点に

佐藤直文 レース回顧
日本ダービー

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運も手繰り寄せて マカヒキが皐月の鬱憤を晴らす

 空前のハイレベルという前評判通りの好レースとなった今年の日本ダービー。2分23秒台の決着はおろか、昨年ドゥラメンテがマークした2分23秒2のレースレコードにも迫る時計が出るのでは、という予測もあったが、1000m通過が60秒0と、昨年よりも1秒2遅いラップを計時した時点で、その可能性もアッサリと消えた。しかも、そこからの2ハロンも、12秒9-13秒1とさらにペースが緩んだことにより、速い上がりの要求される瞬発力勝負、そしてある程度前で運んだ馬が有利となる流れとなった。

 マカヒキは、好枠を利していつもの後方待機ではなく、中団前目のいわゆる“ダービーポジション”に。終始、2着馬を前に見ながらスムーズに折り合って流れに乗っていた。直線を向いて、残り400m地点では前が壁になって進路を探す素振りも見せたが、前が開いた残り200mから持ち前の瞬発力を爆発させた形だ。晴れてダービージョッキーとなった川田騎手の落ち着いた手綱捌きも見事であったが、最後にハナ差の叩き合いを制することができたのも、進路を探しながら脚が溜まった分と言えそうで、このあたりはダービー馬として必要不可欠な“運”も持ち合わせていたのかもしれない。

マカヒキ

激しい叩き合いを8cm制したマカヒキ(右)が世代の頂点に立った(撮影:日刊ゲンダイ)

 逆に、その“運”がなかったのがサトノダイヤモンドだろう。これまた勝ち馬の少し前で流れに乗って、直線では先に抜け出したエアスピネルに馬体を併せる形。ただ、残り200m地点で外にモタれ、それにより勝ち馬に進路を与えてしまった。一旦は半馬身ほど差を付けられながらも、最後は差し返し気味に伸びてのハナ差負けは、勝ちに等しい。しかも、道中で左後肢を落鉄しながらの走り。あまり“タラレバ”の話はしたくないが、もしも落鉄がなければ、ダービーの歴史も変わっていたはずだ。

 ディーマジェスティは、道中は1・2着の直後という、これまた“ダービーポジション”で運んだもの。最内枠からロスなくインぴったりを回って、という選択肢もあったろうが、自分の競馬に徹して能力は示しており、悪い競馬ではなかった。ただ、最後に、モタれた2着馬に少し外へ振られたが、それがなくても上位2頭には届かなかったであろう。戦前から危惧されていたことではあったが、皐月賞時のデキにもなかったかもしれない。

 4着エアスピネルは、上位3頭とは力の差と言わざるを得ないが、本質的には2400mは長いと思える馬であり、能力でここまで走った形だ。競馬自体も上手な馬であり、今後は、2000mなら大きいところも狙えるはずだ。

 5着リオンディーズは、返し馬の段階からテンションが高く、まさかの後方待機となったのも、とにかく折り合いを付けることを重視した結果だったろう。前述したように後方待機組には出番がない緩い流れを、メンバー最速の上がりで掲示板に載ったこと自体、能力は示したと言え、もしも折り合えて好位で運べていたら、これまたどうなったかわからない。ただ、今後に関しては気性のコントロールが鍵となるはず。その克服次第では、秋以降に半兄エピファネイアと同じ結果を生む可能性はある。

 スマートオーディンも、後方からよく脚を伸ばしていたが、やはりもう一列前で運びたかったところ。この馬もまたイレ込み気味で、現状でのウィークポイントであろう。落ち着いて運べるようになれば、上位馬ともっと差のない競馬ができるはずだ。マウントロブソンもスタートで後手を踏みながら、よく追い上げていた。これまでとは違う競馬ができたという点でも収穫はあったように思える。ヴァンキッシュランは、上位3頭とほぼ同じような絶好の位置取りから脚を使えなかった。プラス6キロの馬体重を考えても、青葉賞の反動が出たのではないか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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