重賞初Vのクリプトグラムは、今後も“目が離せない存在”

佐藤直文 レース回顧
目黒記念

更なる高みを目指して クリプトグラムが初重賞制覇

 ダービーの熱狂が覚めやらぬ中で行われた目黒記念は、前半1000m通過が61秒2と、ダービー以上にスローな流れ。ただ、そこからペースは緩むことなく、長くいい脚が要求されるタフな流れとなった。となれば、上位は力通りの結果であり、あとはハンデが勝負の明暗を分けたと言える。

 クリプトグラムは、スタートを決めて中団で流れに乗って運んだもの。4コーナーを回ってスムーズに外へ持ち出し、ひと追いごとに伸びて抜け出した形だ。骨折で出世こそ遅れたが、3歳の春にはアルバートドックあたりと差のない競馬をしていたように、一気の相手強化でも能力通用の下地はあった馬。それでいて54キロのハンデも恵まれていたと言えよう。今後、もうワンランク上の馬との戦いとなっても、自身に伸びしろも十分あるだけに、ちょっと目が離せない存在となるはずだ。

クリプトグラム

外から伸びたクリプトグラムが3連勝で目黒記念を制した(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着マリアライトは、牝馬で56キロは実質のトップハンデ・タイ。それで、斤量の軽い勝ち馬をクビ差まで追い詰めたのだから、負けて強しである。ただ、中間の調教過程からは、あと1、2本追い足りない印象もあった。有馬記念や日経賞当時のデキにはなかったと見て良く、それでいてのこの走りはGIホースの貫禄だろう。

 3着ヒットザターゲットも、勝った昨年より1キロ重い58キロを背負っての激走。8歳という年齢を考えても頭が下がる走りであったが、東京2500mはピッタリの馬なのだろう。秋にアルゼンチン共和国杯でも使ってくれば、近走の着順が悪くてもマークしたいところだ。

 4着レコンダイトは、直線で少し捌きに手間取った感を受けたが、昨年がヒットザターゲットに次ぐ2着だったことを思えば、自分の力は出し切れたと見ていい。これまた東京の長丁場では常に注意が必要な馬だ。

 5着モンドインテロは、少頭数の前走からフルゲートに替わってどんな競馬ができるかが鍵と思えたが、意外と普通の立ち回りができていた。今日のところは現状での力不足と言えるが、勝ち馬同様にこの馬も伸びしろの見込める4歳馬であり、いずれ重賞でもチャンスがあるはずだ。

 タッチングスピーチは、後方からよく追い上げているが、位置取りが後ろ過ぎたし、ハンデ55キロもキツかったか。加えて、キレ味が最大限に生きる、直線が平坦のコースが理想の馬かもしれない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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