凡タイム決着も勝ち馬はクラシックレベル 数字以上の瞬発力でカデナ

佐藤直文 レース回顧
弥生賞

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超スローも何のその カデナ

 古くから皐月賞の最重要トライアルとしての位置付けがなされているレースだが、今年の決着タイム2分3秒2は、同舞台で行われたこの世代のホープフルSや京成杯に見劣っているだけでなく、2000m戦となった1984年以降の良馬場施行に限っても最も遅い時計である。当然、メンバーのレベルを疑わねばならないが、前半1000mが63秒2の超スローだったことを考えれば仕方はなく、少なくとも、上がり最速34秒6という数字以上の瞬発力を見せて差し切った勝ち馬に関しては、本番でも有力の一頭と見ていいだろう。

 そのカデナだが、このスローな流れを鞍上が我慢させて後方で運び、4コーナーでは大外を回る形で差し切ったもの。コースもペースも関係ない、と言わんばかりの強い勝ち方だったものであり、クラシックレベルの大物であることを改めて証明したと言える。前走比較で増減なしの馬体は、成長がないのではなく、それだけキッチリと仕上げてきたと見ていいが、あとは淀みない流れになった時に、今日のような瞬発力を発揮できるか。本番での興味はそこに尽きる。

カデナ

持ち前の瞬発力で前哨戦を制したカデナ(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着マイスタイルは、外から一気に来た勝ち馬には抵抗できなかったとはいえ、3着以下にセーフティリードを保ってのゴール。ただ、1000m通過以降も残り3ハロンまで12秒台のハロンラップで逃げることができたことが好走の最大の因であり、本番でどうこうというレベルではないだろう。

 3着ダンビュライトは、気性面を考えても2000mは少し長いと思える馬だが、ペースが遅かったことで対応できたか。ただ、この緩いペースでもしっかりと折り合えたという点で、収穫はあった。

 4着ベストアプローチは、4コーナーで後方のインという位置は、今日の流れでは厳しかったと言えるが、それでも進路が開いた坂上からはいい伸び脚を見せた。京都2歳Sでカデナにコンマ4秒差3着の実績を考えても、これくらい走って不思議はない馬だ。

 5着サトノマックスも、4コーナーで後方から外を回る形では出番がなくて当然だったが、それでも勝ち馬と並ぶ最速タイの上がりで、差を詰めたもの。まだキャリア1戦で、今日のところはここまでだったが、いずれは重賞戦線で活躍できる素材だろう。

 コマノインパルスは、道中で我慢が利かなかったことも確かだが、この舞台では過去2戦とも35秒台の上がりしか使えていなかったことを考えれば、今日の結果もやむなしか。ペースが流れて上がりのかかる展開なら、と言ったところだが、それでも本番は少し厳しいと言わざるを得ない。ダイワキャグニーは、逃げた馬とは対照的に力みながらの2番手追走。コーナーワークもぎこちなく、キャリアの浅さのみならず初の右回りや急坂も応えたか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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