人気薄をあざ笑い 古豪インカンテーションが目を覚ます

佐藤直文 レース回顧
マーチS

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重賞3勝の実績馬が復活 インカンテーション

 前半1000mが60秒7という速い流れ。脚抜きの良い馬場もあったにせよ、先行馬にとってけっして楽な展開ではなかったはずだが、それでも上位に残った先行勢はそれぞれ地力が高かったということだろう。

 インカンテーションは、好位のインをロスなく立ち回り、直線では馬の間を割って力強く伸びたもの。ここまで重賞3勝の実績を誇ってはいたが、二桁着順続きの近走と57.5キロのハンデを考えれば、手を出しずらいところはあった。ただ、前走のフェブラリーSでは大外枠から果敢にハナを奪って逃げた着順ほど悪くない内容だったものであり、これまで使っては休みを繰り返してきた馬が今季は順調に使えているという点でも、変わって不思議はなかったと言える。今後も順調に使えるなら、目覚めた実力馬がひと暴れしそうだ。

インカンテーション

低評価を覆したインカンテーション(黒帽)が重賞4勝目(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ディアデルレイも、前々で運ぶ本来の形で最後までしっかりと脚を伸ばしたもの。スタートで躓きながらも2着とタイム差なしまで迫った前走の強さが本物だったと言っていいが、久々を叩いての上積みもあったことで、重賞でも勝ち負けになった形だ。

 3着アルタイルは、速い時計の決着や距離延長に対応して、ゴール前は鋭い伸び。結果的に後方から差してきたのはこの馬だけだったということからも、力を付けての本格化と見るべきだ。

 4着ロンドンタウンは、デキの良さを生かし、絶好位でうまく流れに乗れていた。本来なら勝っても良かったとも思えたが、時計のかかる馬場の方がいいタイプであり、57キロのハンデも少し響いたか。

 5着アスカノロマンは、正攻法の競馬で最後まで渋太さを発揮した3走前のチャンピオンズCを、鞍上もイメージしたかのような乗られ方だったが、それ自体は正解だったろう。結果5着はトップハンデ58キロを背負った分と見ていい。

 1番人気のコスモカナディアンは、中団で流れに乗る形だったが、全く伸びるシーンはなかった。少し機動力に欠ける面もあるので、速い時計の決着に対応できなかったのか。それにしても負け過ぎだと思うが…。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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