ディープを超える衝撃 頂上決戦を制したキタサンブラックが連覇

佐藤直文 レース回顧
天皇賞(春)

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タフな流れでの完勝 キタサンブラック

 ちょうど20年前の春、マヤノトップガンが叩き出した3分14秒4という、当時としては破格のレコードタイムを、9年後の2006年に1秒も更新したのがディープインパクト。その3分13秒4という数字も、しばらくは破られることはないと思っていたが、11年後の今年、よもやコンマ9秒も更新されるとは思ってもみなかった。高速馬場に加えて、前半1000mが58秒3、2000m通過も1分59秒7という超ハイペースの賜物(ディープの年は、それぞれ60秒3、2分3秒0)とはいえ、おそらくこれまた10年は破られない大レコードと言っていいだろう。

 離れた2番手だったとはいえ、キタサンブラックにとってもマイペースではなくオーバーペースで、実際に武豊騎手もレース後に語っていたように、最後は一杯一杯だった。ただ、キタサンを見る形で運んだライバルにとっても同じことであり、後続のジョッキーの手が激しく動く中で、馬なりのまま4コーナーから抜け出した時点で勝負は付いていた。まさにステイヤーとしての資質を問われるタフな流れでの完勝であり、少なくともこの舞台では何度走っても結果は同じ、と思えるほどの強さであった。

 2着シュヴァルグランは、自ら動いた前走の阪神大賞典よりも、目標が前にあった分だけさらに早目のスパートとなったが、福永騎手も完全に手の内に入れていたのだろう。捉えられなかったのは相手が強かっただけの話。これまた相当なレベルのステイヤーであり、サトノを抑えての2着は立派の一言だ。

 3着サトノダイヤモンドは、数字上は最速の上がりだったが、脚が上がっていた上位2頭と最後は同じ脚色になったあたりが、ステイヤーとしての資質の差か。不利な外枠や、有馬ではあった斤量差がなくなったことなども影響したとは言えるが、今日のところは完敗であろう。

 4着アドマイヤデウスは、好位のインをロスなく立ち回って、最後も差し返し気味に渋太く伸びていた。鞍上が早目の競馬を教えてきたことが実を結んだと言える好走だった。

 5着アルバートは、中団から直線に賭けて自分の競馬に徹したが、これとてディープのレコードを上回る時計。強敵相手によく走っている。

 シャケトラは、出遅れて気合を付けたら掛かってしまう最悪の形に。ハイペースで折り合いに苦労する馬がいなかった中で、序盤の消耗は致命的だったと言えるが、このあたりはキャリアの差であり、いずれはGIでも勝負になる馬だ。

キタサンブラック

レコードで駆け抜けたキタサンブラックがGI5勝目(撮影:日刊ゲンダイ)

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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