あっと驚く4歳勢の上位独占 鮮やかルメール&アドマイヤリード

佐藤直文 レース回顧
ヴィクトリアマイル

冴えていた鞍上に導かれ アドマイヤリード

 土曜の雨で水分をたっぷりと含んでいた芝だが、日曜は曇りでさほど気温も上がらず、稍重止まりの馬場に。加えて、逃げ馬が不在で前半1000mが60秒1という、馬場を考慮しても明らかなスローペースで、完全な瞬発力勝負となった。直線で外目が伸びるのは確かな事実であっても、道中で外を回るロスは致命的。そのあたりのジョッキーの判断も含めて難しい競馬となったように思う。4歳のGI馬不在というのはレース史上初めてだったようだが、その4歳馬が上位を占めた結果にも驚きは隠せない。

 そんな中で、アドマイヤリードは、枠なりに内を回りながら中団より後ろで脚を溜め、他馬が外を目指した4コーナーでコース取りの差でポジションを上げる形。そこから馬場の中ほどへ進路を取ったが、労せずして前を射程圏に捉えて鮮やかに抜け出した。この日も冴えまくっていたルメール騎手の的確な馬場の読みには、舌を巻くほど。加えて、長く脚を使っているように見えて、間を割って抜けた時だけの一瞬の脚で、見事に勝利へ導いた鞍上の腕を賞賛したい。

アドマイヤリード

鮮やかな末脚を繰り出したアドマイヤリードがGI初制覇(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着デンコウアンジュは、こういう馬場も良かったと言えるが、外を回る形で伸びてきたのはこの馬だけだった。思えば、2歳時のアルテミスSで豪快にメジャーエンブレムを差し切ったのも、この舞台。条件さえ揃えば大物食いをするタイプである。

 3着ジュールポレールは、勝ち馬同様に内々で流れに乗り、直線でもスムーズに外へ持ち出して、一瞬は抜け出すかのシーンもあった。デビューが遅れて未勝利勝ちが昨年6月、秋も500万から出発した馬だが、ここへきて本当に力を付けてきている。

 4着スマートレイアーは、これまた好位の内を立ち回って、直線を向いて早目に先頭に並ぶ形。目標となってしまったとはいえ、最後まで渋太く粘っており、自分の競馬はできたように思う。

 5着ソルヴェイグは、今日のペースでハナを切れたことが好走の最大の因だが、最後まで渋太く脚を使えていた。マイルにも対応できたという点でも、大きな収穫があったと言える。

 クイーンズリングは、直線で上位馬の内で伸び切れなかった形だが、良馬場でこそのタイプであるのに加えて、マイルも少し忙しいか。ミッキークイーンは、直線で2着馬と一緒に伸びかけるシーンもあったが、本来の脚が見られなかった。昨年と同じステップだったとはいえ、調整過程が昨年とは違っており、前走の反動が出たようにも思える。ルージュバックは、4コーナーで最後方の位置からそれなりに伸びてはいたが、これもマイルは基本的に距離不足だろう。レッツゴードンキは、外枠もあって好位を取りにいった形だが、あれだけ掛かってしまっては無理だった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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