一年ぶりの逃走劇 ネロは逃げたら良馬場でも止まらない

佐藤直文 レース回顧
京阪杯

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吉原寛人が押して持たせて ネロ

 この秋の京都は降雨下での施行が続いた上での最終週で、良発表とはいえ1分8秒8の決着タイムが示す通りの荒れ馬場。上位人気馬が揃って消える大波乱となったのも、そういう馬場の影響があったかとは思えるが、負けるべくして負けた馬もいたことは確かだ。

 ネロは、不良馬場だった昨年のこのレースを逃げ切っていたが、良馬場なら厳しいかと思えたところに落とし穴があった。実際に、以降の芝では大敗続きだったことで人気も落としていたと言えるが、押して押してハナへ行き、直線でも二の脚を使わせて持ち味を生かし切った鞍上を讃えるべきだろう。

ネロ

低評価を覆してネロが連覇達成(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ビップライブリーは、これが初距離とは思えないほど好位で巧く立ち回り、勝ち馬を追い詰めたもの。前走がフロックではなかったことを証明するとともに、少し時計のかかる1200mもベストではないかと思える走りだった。

 3着イッテツは、後方待機から4コーナーも大外を回る形で目立つ伸び脚を見せたもの。これまた少し時計のかかる馬場が良かったと言えるが、行ってナンボと思われた馬がこういう競馬をしたこと自体、大きな収穫だろう。

 4着フィドゥーシアは、直線で一旦は抜け出すシーンもあったほどで、引退レースのここへ目一杯の仕上げだったことがよくわかる走りだった。今後は、この牝系の更なる発展へ向け、いい仔を産んで欲しい。

 5着ダイシンサンダーは、自分の競馬に徹して直線でも巧く馬群を捌く形で掲示板を確保したもの。末脚に衰えは見られず、重賞でもどこかでハマっていい馬だ。

 セイウンコウセイは、本来の積極策で何も問題のない競馬だったが、ここまで走らないのはデキが戻っていないということだろう。ソルヴェイグは、勝ち馬がハナを主張したことで2番手からとなったのは仕方ないとしても、4角手前から後続が進出してきたところで踏み遅れた感を受ける。やはり行って粘るのが本領の馬であり、後続を待って楽に抜け出してやろう、という気取った競馬が命取りになったのではないだろうか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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