明暗を分けたローテーション 完璧な競馬でシュヴァルグランが悲願達成

佐藤直文 レース回顧
ジャパンカップ

代打ボウマンの大仕事 シュヴァルグラン

 秋の天皇賞からここ、という王道ローテーションは、通常の年なら危惧する材料とならないが、今年はやはり違っていた。何しろあの極悪馬場での戦いを経て、陣営のコメントこそ“疲れは取れた。反動はない”という言葉が並ぶものの、中3週の天皇賞組が思い通りの調整ができたかどうかは、今回の結果が示しているように思う。そしてまた、王道のローテーションよりも、京都大賞典からジックリ間隔を取って、というのがジャパンC制覇への最良の選択なのかもしれない。

 シュヴァルグランは、最内枠を生かして道中は好位のインをロスなく運び、直線を向いてスムーズに外へ持ち出す完璧な競馬。週明けに騎乗が決まったボウマン騎手だが、さすがは“ワールドベストジョッキー”と言える素晴らしい手綱捌きであった。昨年3着、そして春の天皇賞でも2着とGIであと一歩まで迫っていた馬だが、昨年はアルゼンチン共和国杯から中2週で臨んだのに対し、前述したように余裕のローテーションを組めたことも、悲願のタイトルを手繰り寄せた大きな要因だろう。今日のようなレース運びができるのなら、トリッキーな中山2500mでも何ら割り引く必要はなく、暮れの大一番も楽しみになった。

シュヴァルグラン

豪州の名手に導かれたシュヴァルグランが初GI制覇(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着レイデオロは、スタート直後に前が狭くなって中団のインでの追走。理想は勝ち馬のポジションだったと思うが、これまた直線でスムーズに外へ持ち出し、ダービー馬の実力を示す伸びだった。勝ち馬同様に、枠順も良かったし、ジョッキーもまた完璧。加えて、異例のローテーションながらキッチリと仕上げて臨んだ陣営もまた見事の一言で、2着という結果も勝ち馬を褒めるべきだろう。

 3着キタサンブラックは、昨年の1000m通過が61秒7だったのに対し、今回は60秒2。馬場差があるとはいえ昨年ほどの楽な逃げではなかったが、これはこれで自分の競馬はできていたように思う。むしろ、最後に伸びを欠いたのは、道中のペース配分の問題ではなく、天皇賞の反動と見るべきだろう。いつもの調整よりももう一本追い足りなったことは確かであり、それでも崩れずに馬券圏内に踏みとどまったあたりが実力だ。渾身の仕上げとなるはずのラストランへ向けて、悲観すべき負け方ではない。

 4着マカヒキは、天皇賞組では唯一と言っていいほど上積みが見込める中間の調整過程で、実際に良くなっていたことは確かだ。それでも3着から4馬身も水を開けられたとあっては、まだまだ復調途上なのかもしれないが、乗り方にもう一工夫欲しかったという感も受けた。

 5着アイダホは、日本の硬い馬場に苦しみながらの追走だったが、直線ではよく差を詰めての入着。次走に予定されている香港ヴァーズは、少し時計のかかる馬場が舞台となるだけに、マークが必要だろう。

 ソウルスターリングは、相変わらず掛かり気味での追走だったが、オークスの時計と内容を考えれば、もっと走れていいはず。天皇賞からの臨戦で上積みに乏しかったと言えるだろう。サトノクラウンも、直線を向いたところまでは理想的な運びだったと思うが、そこから本来の伸びがなかったのは天皇賞の反動が出たと見るべきか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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