レベルを侮るのは早計 “おじ級”の活躍見込めるケイデンスコール

佐藤直文 レース回顧
新潟2歳S

直線大外から豪快に ケイデンスコール

 11頭というのは、コース改修後にマイル戦となった2002年以降で最も少ない頭数で、今年の酷暑を象徴しているように思えたが、渋った稍重発表の馬場で1分35秒5という決着タイムもまた、2002年以降で最も遅いものであった。ただ、これは前半3ハロンが36秒3、1000m通過も61秒5という、馬場を考えてもスローな流れによるものであり、例年以下のレベルと判断するのは早計だろう。

 ケイデンスコールは、このスローな流れで、しかも逃げた馬が途中から後続を離す展開でも、無駄に動かずに末脚を温存する形。直線で馬群の大外に進路を取ると、期待通りの豪脚を繰り出し、ラストも内から3着馬が並びかけてきてからもうひと伸びする勝負根性を見せた。能力のみならず現時点での完成度でも他馬を上回っていたと言えるが、まだ手先が重い印象を受ける上に、石橋脩騎手に言わせると“まだ馬体に緩さが残る”中でのこの勝ちっぷりは、今後に伸び悩む早熟タイプとは到底思えない。このレースを皮切りに重賞を7勝した、おじのバランスオブゲーム級の活躍も見込めるのではないだろうか。

ケイデンスコール

直線大外を伸びたケイデンスコールがV(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着アンブロークンは、出負けして序盤は掛かり気味になったが、前に壁を作って何とか折り合えたのが良かった。ロスを抑えたコース取りで直線でも巧く馬群を捌いて脚を伸ばしたものの、勝ち馬の決め手に屈した形。ただ、距離はもっと延びていいタイプだろう。

 3着スティルネスは、好位で巧く流れに乗り、直線でも勝ち馬に抵抗してよく脚を伸ばしていた。初戦は120m戦だったが、距離はこのくらいあっていい馬だろう。

 4着ジョディーは、好発から控える競馬だったが、今日のペースなら前に行っても良かったのではないか。プラス16キロの数字ほど馬体は太くは見せず、最後も内に切れ込みながら脚は使っていた。

 5着エイシンゾーンは、逃げた馬が内を開けていたのに対し、道中は好位のインでコースロスを抑える形。その分だけ直線でも踏ん張れていたが、最後にキレ負けしたあたり、1400mがベストの馬かもしれない。

 エルモンストロは、今日のペースでの離し逃げなら、直線を向いてかなりのアドバンテージもあったはずだが、この結果は力負けというしかない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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