アーモンドアイ、ダノンの受難「一番強い馬が勝つとは限らない」

佐藤直文 レース回顧
安田記念

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鞍上が思い描いた通りの競馬 インディチャンプ

 半マイルが45秒8、1000m通過も57秒0はマズマズの流れと言えたが、驚愕のレコード決着だったヴィクトリアマイルは44秒8、56秒1であり、目下の高速馬場を考えてもけっして速い流れではなかった。実際に、掲示板を占めた馬のうち4頭は、内目の枠から道中はラチ沿いをロスなく運んでいた馬であり、外枠に加えて序盤の不利でポジションも取れなかった中で、タイム差なしの3着まで追い上げて見せたアーモンドアイは、結果はともあれ圧倒的人気に応えるだけの強さを見せたのではないかと思う。

 インディチャンプは、自身にとってはこれまでより速い流れの中で好位をスムーズに折り合って運び、道中はインでロスのない立ち回り。直線を向いて馬場の中ほどへ持ち出されると、坂上から鋭い伸び脚で逃げ込みを図る2着馬をゴール前でキッチリと捉えて見せた。おそらく鞍上が思い描いた通りの完璧な競馬であり、それに応えた馬の力を含めて、全てにおいて優秀な内容。有力馬の不利で運も味方に付けた形とはいえ、今日の走り自体に文句の付けようはないだろう。

インディチャンプ

福永騎手に導かれたインディチャンプがGI初制覇(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着アエロリットは、力みのない逃げで、前述したようにヴィクトリアマイルよりも半マイルで1秒遅いペースだったのだから、走破タイムは同じでもここまで粘って当然だった。自分の力は出し切っての結果だけに、これは勝ち馬を褒めるべきで、胸を張れる2着だろう。

 3着アーモンドアイは、思わぬ序盤のロスにもルメール騎手が冷静に対応していたが、それでもポジションは致命的だった。ただ、あとコンマ数秒速い流れであったなら、おそらく届いていただろう。一番強い馬が勝つとは限らないのが競馬であり、敗れてもなおスーパーホースとの評価に変わりはない。

 4着グァンチャーレは、積極的に運ぶ自分の形で渋太く粘り込んだもの。前走のマイラーズCは超スローの逃げだったが、今日のような競馬が理想の形かもしれない。

 5着サングレーザーは、4コーナーを回った時には勝ち馬の直後のポジションだったが、直線でも開いたインを選択して脚を伸ばしたもの。立ち回り自体は以前よりも上手になっており、いずれはGIに手が届く馬だろう。

 ダノンプレミアムは、脚質を考えてもアーモンドアイ以上の不利があったと言え、今日のところはそれが全てだ。入線後に下馬をしたが、レース後の診断は異常なしとのこと。秋には是非とも無事な姿を見せてほしい。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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