東のジョッキーが極悪福島で奮起 田辺と柴田大が魅せた「最高の騎乗」

佐藤直文 レース回顧
ラジオNIKKEI賞

不良馬場も何のその 外から力で捻じ伏せたブレイキングドーン

 午前中に芝が不良発表となってからも雨が降り続き、かなりの道悪馬場となったが、こういう状況では馬場の巧拙はもちろんのこと、ポジション取りや仕掛けのタイミングなどの鞍上の判断が勝敗を分ける鍵となる。そんな中で、少なくとも上位2頭のジョッキーは最高の立ち回りができたのではないだろうか。

 ブレイキングドーンは、序盤は後方でジックリと脚を溜め、3角手前あたりから馬の行く気に任せて外目を回って一気に進出。これまでは使える脚が一瞬というイメージもあった馬だが、長く脚を使わせる形で力を余すことなく出し切ることができたのは、福島は庭とも言える田辺騎手の腕によるものだったろう。これがテン乗りだったとは思えないほど、馬の適性を見抜いた好騎乗であった。

ブレイキングドーン

極悪馬場での一戦は3番人気のブレイキングドーンが勝利(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着マイネルサーパスは、今日の馬場で内枠を引いてどう立ち回るのか、と思っていたが、スタートから出して行って好位のインに収まったのは、レコード勝ちしたきんもくせい特別のような競馬ができない馬場だと踏んでの、これまた鞍上の好判断だった。最後は内外で離れたこともあって、勝ち馬の強襲に抵抗はできなかったが、力は十分に示した内容だ。

 3着ゴータイミングは、後方で折り合いに専念して、馬場のいい外を回って直線勝負に賭けた形。重馬場での新馬勝ちがあるとはいえ、今日のような馬場が合うタイプではなく、これはこれで最善策と思える立ち回りだったが、上位2頭の立ち回りが一枚上手だった。

 4着ダディーズマインドは、馬場を考えれば1000m通過61秒0の逃げはけっしてスローではなかったが、気分良く運べたこともあって渋太く粘り込んだもの。皐月賞でも見せ場を作ったことを考えれば、今日の粘りも納得できる。

 5着アドマイヤスコールは、大外枠から最初のコーナーでインに潜り込んで距離ロスを抑え、脚を溜めたまま直線では射程圏に進出。ラストの伸び脚も目立っていたが、インからではここまでが精一杯だった。

 ヒシイグアスは、意識的に控えたというよりも、下が悪くて馬が進んで行かなかった結果の中団追走。4コーナーでは最後方まで後退したあたり、道悪は空っ下手の部類かもしれない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。