ただただ強かった 最大のライバルを覚醒させてしまったルメール

佐藤直文 レース回顧
セントウルS

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夏の王者にとどまらぬ タワーオブロンドン

 芝でもスピードを如何なく発揮したマテラスカイに、ラブカンプーが絡んでのテン3ハロン33秒0という激流。それがもたらした1分6秒7のレコード決着だったが、それにしてもこの距離では大差と言える2着に3馬身もの水を開けた勝ち馬は、ただただ強かった。

 そのタワーオブロンドン。この距離が3戦目での慣れもあってか、これまでのように追走に苦労することもなく、今日の速い流れでも中団を手応え良く運ぶ形。直線で満を持して外へ持ち出され、残り1ハロンの手前で鞍上からゴーサインが出されると、弾かれたように突き抜けて見せた。前走札幌からの中1週というローテーションは、サマーシリーズ制覇に狙いを定めたものと思えたが、この勝ちっぷりであれば、さらに中2週となるスプリンターズSでも期待が高まった。その本番ではグランアレグリアに騎乗するルメール騎手だが、自らの手で最大のライバルを覚醒させてしまったと言えよう。

タワーオブロンドン

最後は2着馬に3馬身差をつけ快勝のタワーオブロンドン(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ファンタジストは、前でやり合う2頭の直後で運んで、直線でもしっかりと脚を伸ばす上手な競馬ができた。勝ち馬には並ぶ間もなく交わされたとはいえ、先々が楽しみになる走りはできたように思う。

 3着イベリスは、テンに行く構えを見せたものの2頭が速くて控える形。初めての古馬との手合わせで、これまでとは勝手の違う競馬を強いられた上に、直線でもスムーズに追えないシーンがあったことも考えれば、この結果でも評価できる。今日のような厳しい流れを経験したことも、今後に生きるはずだ。

 4着ペイシャフェリシタは、好位のインをロスなく運んで、直線でも逃げた馬の直後から絶好の手応えだったが、そこからスペースを探す形になって満足に追えなかったことが惜しまれる。

 5着キングハートも、枠なりにロスなく運んで自身久々の掲示板確保となる大健闘。本来は時計のかかる馬場が理想だけに、今日の走りはある程度の復調を示すものかもしれない。

 ミスターメロディは、外を回る形だったとはいえ、追走に余裕が感じられ、直線を向いた時点でも手応えは十分にあったように見えたが、追われて全く反応しなかった。本番を見据えた仕上げに加え、58キロの斤量や右回りなど、疑うべき点はあるが、いくら本番に強い藤原英厩舎と言えども、巻き返しは容易ではないと思える負け方だった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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