舌を巻く横山典の巧さ 11着エアアルマスは「能力は確かだが…」

佐藤直文 レース回顧
武蔵野S

いぶし銀が引き寄せた金星 ワンダーリーデル

 押して押してハナを奪ったドリームキラリに後続もプレッシャーをかける形で、前半3ハロンが34秒7、1000m通過も58秒6というハイラップ。やはりこれでは前の組には辛く、中団から後方待機組に利があったと言えるが、それでも仕掛けのタイミングや進路取りは難しい一戦だったように思う。

 ワンダーリーデルは、後方のインで脚を溜め、勝負どころで加速した上で直線で先行馬群の外へ。直線で突き抜けると、後続の追い上げも危なげなく完封して東京巧者ぶりを如何なく発揮した形だが、これ以上ない完璧なレース運びをテン乗りでやってのけた横山典騎手の巧さには舌を巻いた。ここまで6勝のうち5勝が1400m戦という馬ではあったが、この走りなら1600mでこそ。来春のフェブラリーSでも面白い存在だと言える。

ワンダーリーデル

9番人気の6歳馬ワンダーリーデルが初重賞タイトルを獲得(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着タイムフライヤーは、直線で勝ち馬と馬体を併せる形で力強い伸びを見せたもの。案外だった前走のシリウスSは、おそらく距離が長かったもので、東京のマイルダートはフルに力を発揮できる舞台だろう。

 3着ダノンフェイスは、後方のインを追走する形だったが、馬群がバラけた4コーナーで巧く外へ持ち出し、これまた目立つ伸び脚。展開が向いたとはいえ、マイルの距離で上手に脚を溜められたことが好走の因だろう。

 4着ダンツゴウユウは、中団のインから直線では進路が見つからずに追い出しを待たされたが、結果的にはそこで脚が溜まったのが良かったか。

 5着サンライズノヴァは、今日のペースで先行できたこと自体に驚かされたが、先行勢総潰れの流れを59キロを背負って掲示板を確保したのなら、負けて強しだ。

 デュープロセスは、好位追走でも厳しい流れだったと言えるが、それでも全くシーンがなかったあたり、まだ春のデキにないのかもしれない。エアアルマスは、抜群のスタートを決めた上で、内目の枠もあってか出して行ったが、モマれて砂を被ったところで嫌気を差してしまった。能力は確かだが、まだ課題はある。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。