まるでサイレンススズカ 逃走Vマルターズアポジーに大化けの予感

佐藤直文 レース回顧
小倉大賞典

ブンブン飛ばして マルターズアポジー

 ダッシュ良くハナを奪った勝ち馬の逃げ切り決着となった小倉大賞典だが、中盤でも11秒台半ばのラップを刻んで1000m通過が57秒6というのは、かなりのハイペースだった。短距離戦はともかくとして、スローのマイペースが相場の中距離戦ではなかなかお目にかかれない逃走劇である。

 そのマルターズアポジーだが、道中で絡まれたわけでもないので、このハイペースの逃げが自分の形とも言えるだろう。小回りコースを生かして、結果的に後続にも脚を使わせて追撃を封じたわけだが、この勝ち方はスケールの違いこそあれ、サイレンススズカを彷彿とさせるもの。昨年夏の本格化以降、敗れたのは距離が長かった有馬記念だけであり、中距離ならひょっとすると…との期待も抱かせる勝ちっぷりだった。

 2着ヒストリカルは、小回りを意識してかいつもより早目に動いて長くいい脚を使ったもの。明けて8歳となったが、GIIIならまだまだ勝負になる馬だ。

 3着クラリティスカイは、前走で2200mを使った馬にとっては忙しい流れだったように思えたが、トップハンデを背負って地力は示す走りだった。3歳春のNHKマイルC以降は勝ち星に見放されているが、復活の日も近いだろう。

 4着ロードヴァンドールは、一緒に勝ち馬を追いかけたマイネルハニーがシンガリに沈んだことを考えれば、上々の粘りと言えるだろう。ハンデも生かした形だが、力を付けていることは確かだ。

 5着ストロングタイタンは、ここまで小倉は2戦2勝の馬だったが、内枠もあってか過去2戦のようなスムーズな競馬ができなかった印象。流れも厳しかったと言えるが、まだ十分に力を付け切っていないと見るべきだろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。