松山は慌てず騒がず 「喜ばしい」偉業達成デアリングタクト

佐藤直文 レース回顧
秋華賞

無敗の三冠牝馬がここに誕生 デアリングタクト

 同一年に牡馬と牝馬の三冠馬が誕生したことは今までに例がなく、しかも、ともに無敗でのチャレンジ。おそらく、この先もそうそうあるとは思えない歴史的な秋の舞台に、偉業達成の瞬間を画像でしか語り継ぐことができないという状況が回避され、まだ1000人足らずではあるがファンが立ち会えるのは、何より喜ばしいことである。

 オークス以来のぶっつけで挑んだデアリングタクト。プラス14キロの馬体は、見た目にも太くはなく成長分と言える仕上りだったが、やはり久々のせいかテンションが高めで立ち遅れ気味のスタートとなった。ただ、鞍上の松山騎手は慌てず騒がず序盤は折り合い重視で運び、中間点を過ぎたあたりから外を回って進出し、4コーナーでは射程圏に。残り1ハロンで先頭に立つと、早目に動いたにもかからず最後まで脚色に乱れはなかった。他の世代との比較はさておき、この世代牝馬において能力が頭一つどころか二つくらいは抜けていたということだろう。無敗の三冠牝馬として、この先の戦いがさらに楽しみになったと言える。

デアリングタクト

松山の落ち着いた騎乗も光ったデアリングタクト

 2着マジックキャッスルは、久々だった前走から10キロ増の馬体だったが、これは馬体が戻って状態がアップしたもの。これで重賞では3度目の2着となったが、直線では勝ち馬と同じくらいの伸びを見せており、力は出し切ったと見ていい。

 3着ソフトフルートは、出遅れて最後方からの競馬となったが、先行勢が壊滅する流れも味方に付けて、直線で目立つ伸びを見せた。まだ条件級の身だが、もっと距離が延びて真価を発揮する馬だろう。

 4着パラスアテナは、勝負どころから3着馬とともに外をマクリ気味に進出し、これまた展開が向いた形だが、このメンバーで見せ場を作れば上々の首尾だろう。

 逃げたマルターズディオサや、それを見る形で運んだウインマリリンにとっては流れがいかにも厳しかった。リアアメリアも、一息だったスタートから出して行って好位に取り付いたが、ここまで大きく負けたのなら、ローズSの反動が出たのかもしれない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。