福永の涙にも「納得」 “三冠馬”コントレイルが取り戻したもの

佐藤直文 レース回顧
ジャパンカップ

誇りと輝きを取り戻した コントレイルの悔いなきラストラン

 前半1000mが62秒2のゆったりした流れ。そこからキセキが一気に動いて先頭に立ち、レース自体のラップは上がったが、2番手以降の馬は完全なスローペースだったと言える。午前中の2歳戦でレコードこそ出たが、洋芝を長目にして少し時計のかかる馬場だったことは確かで、2分24秒7の決着タイムもけっして低レベルのものではないだろう。しかも、上がりもかかる状態の馬場で、メンバー唯一、上がり3ハロン33秒台をマークした勝ち馬の脚は、やはり別格だったように思う。

 そのコントレイル。無敗の三冠馬とはいえ、育成の段階から脚元に不安を抱え、これまでも完璧な状態に仕上げるのが難しかった馬。天皇賞からの中3週となった今回は、テンション面も含めてラストランへ悔いのない仕上げだったと感じたが、それに応えるかのように理想的なポジションで運んでフルに力を発揮させた福永騎手に、溢れる涙が止まらなかったのも十分に納得できる。父ディープインパクトの晩年の最高傑作として、父を超える競走成績こそ残せなかったが、今後は種牡馬として再び父の域を目指す活躍を期待したい。

コントレイル

見事に有終の美を飾った三冠馬コントレイル

 2着オーソリティは、スローペースの好位で流れに乗って、直線では後続の有力馬を待つことなく自ら勝ちに動いて一旦は先頭に立ったもの。とにかく競馬が上手になった印象を受けるが、これで負けたのならしょうがないとも言える素晴らしい走りだった。

 3着シャフリヤールは、位置取りこそ理想的だったが、序盤の1コーナーで接触する不利があり、そこで少し力んでしまったことが、最後に伸びを欠いた要因かと思える。けっしてフルに力を出し切っての完敗ではないだけに、来年以降はこの路線の主役として活躍できるはずだ。

 4着サンレイポケットは、この馬としてはいつもよりも前目のポジションで運んだが、ペースを考えれば正解だったか。前走に続いて最後までしっかりと脚を使っての健闘だった。

 5着グランドグローリーは、勝ち馬よりも後ろのポジションだったが、ラスト1ハロンを切ってから目立つ伸び脚を見せていた。もう少しペースが流れていれば、チャンスもあったのではないか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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