【オールカマー回顧】“内内内”の競馬でも デアリングタクトの敗因は「トラックバイアス」だけではない?

佐藤直文 レース回顧
オールカマー

馬場も味方にした良血馬、ついに ジェラルディーナ

 稍重スタートだった中山日曜の芝は、午後の5レースから良馬場へと回復。好天による急速な回復時には内から乾いていくという傾向もあり、ただでさえCコースへ替わった週だけに、内有利のトラックバイアスが結果を大きく左右したと言えるだろう。

 ジェラルディーナは、枠なりに今日の馬場では絶好とも言えた好位のインで折り合いを付け、直線でもそのままインの進路を選択した上で、最後は狭いところをこじ開けて一気に抜け出したもの。中団以降でジックリと脚を溜めて差す戦法を続けてきた馬だが、テン乗りで癖をうまく掴んで見事に御してみせた横山武騎手の好プレーに加え、やはりその競馬ができた枠順の利も大きかったか。他の有力馬に対しては、夏場に一度使われていたアドバンテージもあっただろう。

ジェラルディーナ

ジェンティルドンナの愛娘ジェラルディーナが重賞初制覇

 2着ロバートソンキーは、勝ち馬の後ろでこれまた枠なりに内ラチ沿いをピッタリと追走した形。ペース的には前残りの流れではあったが、ロスのない競馬ができたことで、ラストに鋭い伸びを見せることができた。

 3着ウインキートスは、ハナには行けなかったものの、道中3番手のインで自分の競馬はできていた。昨年よりひとつ着順を落したものの、上位2頭は昨年の自身のように夏場に使われた馬であり、力に衰えがないことは示したと言える。

 4着バビットは、大外枠から果敢にハナを奪ってマイペースに持ち込んだが、無理をしてでもラチ沿いを確保できたことが善戦の因だろう。もしも内枠を引いてもっと楽にハナを切れていれば、残り目もあったとすら言える。

 5着テーオーロイヤルは、前々のポジションで流れに乗れていたが、追われて伸びを欠いたのは久々の分だろう。上位馬に対しては馬場の中ほどを回った差もあった。

 6着デアリングタクトは、パドックでは落ち着きがあって、気配は良く見せていた。ただ、後方から外を回ってという競馬では届かないトラックバイアスとペースだったことは確かだが、3歳時のパドックではレースへ行って掛かってしまうのではないかと思えるほど気合いを表に出していた馬であり、そこまでギリギリではないソフトな仕上げだったことが響いたかもしれない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。