【ジャパンカップ回顧】ムーアが「こじ開けた」頂点への道 “ジョッキーの腕”が結果を左右

佐藤直文 レース回顧
ジャパンカップ

芝6戦目で一気に頂点へ ヴェラアズールが馬群を割る

 1000m通過61秒1のスローペースに加えて、イン有利の馬場だったこともあって、直線を向いた時点で馬群が密集する展開に。瞬発力が問われると同時に、ジョッキーの腕が結果を大きく左右する一戦となった。

 ヴェラアズールは、道中はロスのない立ち回りができたとはいえ、直線を向いた時点では全く進路が見つからないほどの厳しいポジション。並みのジョッキーであれば、万事休すであったろうが、脚を溜めつつ進路を探り、最後は一瞬の隙をついてこじ開けてきたムーア騎手の判断力には舌を巻いた。もちろん、まだ芝に転じて6戦目とは思えない馬自体の能力と操縦性の高さがあったからこそであり、ラスト1ハロンからの伸びはライバルたちと一線を画すものだった。

ヴェラアズール

馬群をこじ開けてきた3番人気ヴェラアズールが一気の初GI制覇

 2着シャフリヤールは、枠なりに外を回らされる厳しい展開となったが、4コーナーの手前から仕掛けられて、直線でもダービーでの走りが蘇ったかのような伸びを見せて一旦は先頭に立ったが、仕掛けが早かった分、最後に内から来た勝ち馬に抵抗できなかった。

 3着ヴェルトライゼンデは、内枠を利して最高の立ち回りができた形で、最後も止まったわけではなく距離もこのくらいがベストだったろう。

 4着デアリングタクトは、馬群が密集した直線で再三の不利を受けながらも、よく差を詰めて力は示した。中1週の強行軍を考えても、頭の下がる走りだったか。

 5着ダノンベルーガは、2着馬同様に枠なりに外を回って早目に動かざるを得なかった形。直線では一旦先頭に立つシーンがあったが、残り1ハロンの時点ではもう脚が残っておらず、ゴール前の不利がなかったとしても結果は変わらなかったろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。