奇襲成功ネオリアリズムが初重賞 2着モーリスは“まあまあ”

佐藤直文 レース回顧
札幌記念

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よもやの奇襲でモーリスを完封 北の地でネオリアリズムが開花

 札幌競馬場は、芝コースが作られた1990年以降、芝は一度も不良になっていない。夏場の札幌は雨が少ないとはいえ、今回のように台風の影響でかなりの雨が降っても持ち応えるのは、相当な水ハケの良さを誇っていることに他ならない。土曜の午後に一旦は“重発表”となったのも、実に7年ぶりのこと。稍重に回復した札幌記念は、決着タイムも2分1秒7。心配されたほどの馬場の悪化がなく、結果的には上位人気5頭が掲示板を占めたように、スーパーGIIにふさわしい戦いとなった。

 最終追いでは注目の僚馬モーリスに遅れていたネオリアリズムは、前走の函館記念からマイナス18キロと、大幅に馬体を絞ってきたことが良かったと言えるが、何より奇襲とも言える逃げの手に出たことが最大の勝因だろう。前走を含め、これまで折り合いに散々悩まされてきた馬だが、逃げ馬不在のここで“こういう手があったか”と、膝を叩きたくなるレースぶりだった。気分良く走れたことで、馬場を考えれば少々早い前半1000m59秒9のラップを踏んでも、危な気なかった逃げ切りであり、条件戦とはいえこれまで2戦2勝という札幌芝の適性も高かった。同じ戦法が秋のGIで通用するとは思えないが、能力自体は十分に足りることを示したのではないか。

 僚馬に足元を掬われた形の結果となったモーリスだが、課題の折り合いは、外枠からでもモレイラ騎手がうまく前に壁を作って運んだことにより問題はなかった。ただ、折り合い重視のあまり少しポジションが悪くなったことは否めない。勝負どころから早目に動き出して最低限の2着を確保したが、懸念された馬場や、試走の意味合いもあった距離については、“まあまあ”クリアできたのではないだろうか。

 3着レインボーラインは、モーリスの後を追うように進出し、ゴール前でもよく追い詰めていた。3歳世代のレベルの高さを改めて示したと言えるが、モーリスと同じように外を回って差し切るのは至難の業であり、勝ちに行く競馬ではなかった印象を受けた。ここまで走ると思ってはいなかったのか、鞍上の捌きの甘さが惜しまれる。

 4着ヌーヴォレコルトは、久々でも馬体を絞っての好仕上り。好位のインをうまく立ち回る自分の競馬で力は発揮できたように思えるが、今日のところは上位も強かった。このあとは米国遠征(ブリーダーズCフィリー&メアターフ)を予定しているが、牝馬同士の戦いであれば、そう世界との差もないはずだ。

 5着ヤマカツエースも、道中はヌーヴォと同じような位置取りで自分の競馬はできていた。これまた相手が一枚上だったと見ていいだろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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