月イチで使われグイッと成長 タイムフライヤーが春の主役候補へ

佐藤直文 レース回顧
ホープフルS

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自ら動いて強い勝ち方 タイムフライヤー

 GI昇格元年のみならず、昨年の勝ち馬レイデオロがダービー馬となったこともあり、朝日杯フューチュリティSに替わって“最強2歳馬決定戦”の意味合いを持つのか、という観測もあっただろうが、今年は朝日杯に重賞ウイナーが5頭揃ってハイレベルのレコード決着となったのに対し、こちらは重賞ウイナーが僅か1頭だったばかりか出走馬の半数以上を1勝馬が占め、GIとしては少し淋しいメンバー構成となった。ただ、これは今年に限ったことではなく、すでに賞金を確保してクラシックを見据えた馬が、朝日杯ともども暮れのレースを回避する昨今の傾向が弱まるとは思えない。そんな中で、朝日杯では現時点での完成度が問われるのに対し、ホープフルSは先々が楽しみな期待馬が集う一戦という捉え方をすべきだろう。なんて書き方をすると、今年のレースレベルが低かったのかとも思われそうだが、前半1000mが59秒6という速めのラップだったとはいえ、昨年のレイデオロにコンマ1秒差の2分1秒4という決着タイムは、けっして低レベルの数字ではない。

 タイムフライヤーは、好位で運んだ前走とは一転して、馬群の最後方で脚を溜める形。3角を過ぎてから馬群を捌きつつ4角では射程圏まで進出したもので、流れが向いたとはいえ自ら動いてのものだけに、これは強いと思える勝ちっぷりだった。これまでのレースぶりからは少し不器用な馬との印象もあったが、夏の新潟でデビューしてから月イチで使われつつ、成長曲線を描いての見事な勝利。父ハーツクライなら、まだまだその曲線も上昇するはずだ。

タイムフライヤー

1番人気に応えたタイムフライヤー(青帽)が戴冠(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ジャンダルムは、序盤こそ力みも見えたがペースが速かったこともありスムーズに流れに乗れていた。勝ち馬との叩き合いで最後に突き放されたのは、先に動いた分ではなく、2000mは明らかに長いと思える距離適性の差。むしろポテンシャルの高さで守備範囲外の距離をこなした点を評価すべきで、いずれはマイル路線を牽引する馬となるに違いない。

 3着ステイフーリッシュは、前半は後半で脚を溜め、勝負どころからポジションを上げて、4角では勝ち馬とほぼ同じ位置だったが、そこでスッと離されてしまったのが痛かった。ただ、今日のところはキャリアの差での負けであり、坂を上がってもう一度脚を使っていたことを考えれば、クラシック戦線でも注目できる存在となるはずだ。

 4着サンリヴァルは、先行馬には厳しい流れだったことと、3ヶ月ぶりの久々を考えれば、よく走っている。上位3頭とは着差ほどの実力差もないはずだ。

 5着ナスノシンフォニーは、スタートで外に大きくヨレるロスがあり、勝負どころでもブレーキをかけるシーンがあったもの。それでいてここまで追い上げたのは立派であり、今後の課題を解消できれば、オークスあたりで期待できるかもしれない。

 ルーカスは、やはり追い切りでのアクシデントの影響が少なからずあったかと思えるが、いずれにしろ完成途上で成長待ちの馬か。フラットレーにも同じことが言えそうで、そもそも素質だけで何とかなるような質の競馬ではなかった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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