まさかの逃走劇で ミスパンテール&横山典が重賞3連勝

佐藤直文 レース回顧
阪神牝馬S

超スローに持ち込んだ時点で勝負あり ミスパンテール

 ただでさえ逃げ馬不在のメンバーで、ハナに行くと思われたクインズミラーグロが出遅れて予想外の展開に。逃げや追い込みなどの脚質は、馬の特性などを考えてあくまで人間が決めるものだが、かと言ってその選択が正しいのかどうかは馬に聞いてみないとわからない。ただ、型にはめずに馬の気に任せて立ち回らせることにかけては第一人者と言えるジョッキーに、その変幻自在ぶりを堪能させてもらった一戦だった。

 ミスパンテールは、外目の枠から抜群のスタートを決めると、躊躇なくハナへ。マイルでテン3ハロン37秒2、1000m通過も61秒0という超スローに持ち込んだ時点で勝負はあった。同じ横山典騎手が乗っての重賞連勝は、いずれも脚を溜めての差す競馬であり、それ以前にもこんな競馬をしたことがなかった馬を、こんな大胆騎乗で後続を煙に巻くとは。馬の能力もさることながら、鞍上の手腕に恐れ入った。

ミスパンテール

逃げの手に出た横山典とミスパンテール(橙帽奥)が重賞3連勝のゴール(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着レッドアヴァンセは、4ヶ月半ぶりながらパドックではもの凄く状態が良く見えた。スローの2番手で流れに恵まれたことも確かだが、先行して最後までしっかりと脚を使う今日のような競馬ができるのなら、今後も楽しみである。

 3着リスグラシューは、勝ち馬とは対照的にスローでも自分の型を貫いて無駄に動かず、直線でも狭いところを割ってよく脚を伸ばした。展開を考えれば一番強い競馬をしており、ヴィクトリアマイルでは巻き返しが期待できよう。

 4着アドマイヤリードは、スタート後に行きかけて控えた形。好位で十分に脚は溜まっていたが、直線で少し窮屈になったのと、前も止まらぬ流れに泣いたと言える。これまた目標のヴィクトリアマイル連覇に向けては、悲観すべき内容ではなかったように思う。

 5着ジュールポレールは、前々で上手く立ち回ったが、ゴール前では鞍上が立ち上がるほどの不利を受けた。ただ、すでに脚はなくなっており、不利がなくても着順は変わらなかっただろう。

 ソウルスターリングは、休み明けでの馬体減で、実際にパドックの映像を見ても馬体が萎んで見えた。スローで掛かってしまったのも敗因と言えるが、それ以前に体調面の問題があったと見ていい。

 

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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