我慢して掴み取った栄光の座 淀に架かったレインボーライン

佐藤直文 レース回顧
天皇賞(春)

大きな成長と鮮やかな騎乗で レインボーライン

 京都は開幕週こそマイラーズCでレコードが出たものの、先週は極端に速い時計は出ない馬場で、それもあってか良馬場では過去10年で最も遅い3分16秒2の決着タイムとなった。ただ、1000m通過60秒1、2000m通過2分2秒8のラップ自体は、けっしてスローではなく、むしろ淀みのない流れ。道中で無駄に動かずに、どれだけ脚を溜めることができたかが、勝負の分かれ目になった感を受けた。

 レインボーラインは、後方からジックリ運ぶ自分の競馬で、各馬が動きはじめた2週目の向正面半ば過ぎでも我関せず。ここで我慢できたのは、岩田康騎手が完全に手の内に入れていたからこそであり、直線で内に進路を取った判断とともに、最後の最後に脚を使わせた鞍上の鮮やかな騎乗ぶりであった。もちろん、馬自身も5歳の春を迎えて大きな成長を示した形だが、ゴール後に下馬をして右前肢跛行と診断された脚元が大事に至らなければ、秋には2つ目のビッグタイトルも視野に入るはずだ。

レインボーライン

シュヴァルグラン(手前)を内から捉えたレインボーライン(奥)がGI初制覇(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着シュヴァルグランは、ジャパンCと同じように、ボウマン騎手が出して行って好位で運ぶ形。キタサンブラックを目標に動いた昨年とは対照的に、今年は自らが他馬の目標となったわけだが、その厳しい状況で4角からゴール寸前まで先頭を守り通したのだから、負けて強しの内容であった。

 3着クリンチャーは、折り合い重視で運びながらも上手く流れに乗れて、直線でも目標とした2着馬に一旦は並びかけるシーンもあった。ただ追い比べとなっては分が悪いのが現状でもあり、力は示したものの、まだこれからの馬だろう。

 4着ミッキーロケットは、内枠を利して道中はインでじっくりと脚を溜め、直線でも内から一瞬は見せ場があった。現状の力は出し切れたと見ていい。

 5着チェスナットコートは、中団から外を回って進出し、直線でも渋太く脚を伸ばしていた。現状でここまで走れば御の字であり、これまた3着馬同様にこれからまだまだ強くなりそうな4歳馬だ。

 サトノクロニクルは、そこまでペースが緩んでいたわけでもないのに、向正面で一気にマクる形では失速も止む無し。ガンコも前々で積極的に運んだが、昨秋から休みなく使われていた分の疲れが出たかと思える止まり方だった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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