ウオッカのかけた魔術で 後輩ワイドファラオが鮮やか逃走V

佐藤直文 レース回顧
ニュージーランドT

プラス12キロは成長分 ワイドファラオ

 それなりに先行脚質の馬は揃っていたのだが、ワイドファラオが最内枠から絶好のスタートを切ってポンとハナに立ったことでペースも落ち着き、1000m通過は60秒3のスローペースに。この日のメインは3場とも急逝したウオッカの追悼競走と銘打って行われたが、角居厩舎の後輩にあたる同馬の逃げに、天国のウオッカが後続に金縛りの魔術でもかけたのか、とも思えるレースだった。

 そのワイドファラオ。プラス12キロの馬体に太目感はなく、これはそっくり成長分で、パドックでも絶好の気配だった。前述したマイペースの逃げで、上がり3ハロンを33秒9でまとめたのであれば、これは後続も成す術がなかっただろう。今日のところは展開利が全てだったとはいえ、スピードの持続力に長けたマイラーとしての活躍が期待できよう。

ワイドファラオ

4番人気ワイドファラオ(白帽)が追撃を凌いでV(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着メイショウショウブは、逃げ馬の直後のポジションで自分の競馬ができていたし、鞍上にも前はいつでも交わせる手応えがあったと思えたが、勝ち馬が想像以上に渋太かったもの。出遅れた前走こそ不本意な競馬となったが、自分の型に持ち込めばそう簡単には崩れない馬だ。

 3着ヴィッテルスバッハは、出遅れて最後方からの競馬となったが、直線では一頭だけ違う脚を使って前を追い詰めたもの。能力は十分に示し、これだけの脚を使えるのなら本番のNHKマイルCでは、と思わせるレースぶりだった。もちろん東京ならマイル戦で期待できるが、先々はもっと距離が延びていい馬かもしれない。

 4着アガラスは、中団後ろ目のポジションで今日のところは展開も向かなかったが、馬具を換えた効果はあったと思える走り。この馬もマイルは少し短く、1800~2000mあたりがベストだろう。

 5着ショーヒデキラは、2走前の中山でレース後に武豊騎手が“右回りはダメ”とコメントしていたが、やはり今日の走りにもそういう面が見られた。それでも、未勝利を勝ったばかりの身で掲示板を確保したのだから、能力はある。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。