「常識破り」グランアレグリア陣営に感嘆の声 次走NHKマイルなら…

佐藤直文 レース回顧
桜花賞

ステップレースをスルーして グランアレグリアが一気に満開

 昨年はアーモンドアイがシンザン記念からの3ヶ月ぶりで制し、このレースにおける出走間隔の最長優勝馬記録を更新したが、更にそれを更新する馬が翌年に出現するとは。ただ、近年の調教技術や施設の休息な進歩を考えれば、前哨戦を一叩きしてというこれまでの常識を覆すローテーションも、けっして驚くべきことではない。もちろん、約4ヶ月ぶりでの大一番に、完璧に近い仕上げで出走させることは、簡単なことではないだろう。それをやってのけた陣営と、何より馬の能力に感嘆の声を上げずにはいられない。

 グランアレグリアは、半マイル47秒7という過去10年でも2番目に遅い流れを、序盤こそ宥めながらの追走ではあったが、折り合えてからは実にリラックスした走りだった。そして、勝負どころで前のペースが上がらないと見るや、自ら動いて4コーナーでは先頭に立ち、直線では少しラチにモタれ気味ながらも上がり3ハロンを33秒3でまとめたのであれば、後続も成す術はなかった。アーモンドアイの出走間隔記録のみならず、レースレコードもまた更新しての1分32秒7は、スローペースだったことを考えれば相当な価値があり、タイプこそ違うがこれまた牝馬という規格外の大物が出現したと見ていい。次走はおそらくNHKマイルCになると思うが、確勝級と言っていいのではないか。

グランアレグリア

グランアレグリアがレースレコードで1冠目を獲得(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着シゲルピンクダイヤは、外枠からスタートで安目を売る形は前走同様だったが、そのまま外を回って追い込んでは届かない流れを、4コーナーから内に潜り込んでロスを抑えた鞍上の巧みな手綱捌きが、最後の伸びに繋がったと言える。今日の走りを見ても、おそらく距離が延びていいタイプであり、オークスでも注目の一頭となるはずだ。

 3着クロノジェネシスは、序盤で行きたがっていたのを宥めているうちにポジションが悪くなり、直線でもゴチャついて外へ持ち出すのが遅れてしまったもの。有利かとも思えた内枠が結果的にはアダとなってしまった感を受けたが、マイルは基本的に距離不足の馬でもあり、これまたオークスでの巻き返しに期待したい。

 4着ダノンファンタジーは、レース前からテンションが高く、スムーズに折り合うことができなかった。早目に動いた勝ち馬を追って進出し、直線で一旦は2番手に上がりながらそのポジションを確保できなかったのも、折り合いを欠いた分だったろう。

 5着ビーチサンバは、ペースを考えれば早目に動いて行ったのも正解だったろうし、力は出し切ったと見ていいが、どう乗られてもここまで、というもどかしさのある馬だ。

 アクアミラビリスは、今日のペースを考えればポジション取りも悪くはなかったが、速い時計の決着に対応できなかった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。