「ジェンティル超え」ラヴズオンリーユー 歴史的名牝となる資格は…

佐藤直文 レース回顧
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無敗の女王ここに誕生 ラヴズオンリーユー

 前半1000m59秒1は、過去10年でも2012年と並んで最速タイのラップで、スローにはならないと想定はしていたが、ここまで速くなるとは思わなかった。距離が一気に延長されるにもかかわらず、桜花賞上位組がそのまま上位を占める結果となるケースは多いが、それはあくまで瞬発力勝負になってこそであり、今回のような淀みない流れでの消耗戦になれば、距離の誤魔化しが利かない底力が問われる一戦になる。少なくとも、上位2頭と、水を開けられた3着以下の馬たちとは、その差が出たように思う。

 ラヴズオンリーユーは、今日の流れでは理想的と言える中団でジックリと脚を溜め、直線で馬群がバラけて進路を確保すると鞍上のゴーサインに応えて力強く伸び、先に抜け出していた2着馬をキッチリと捉え切った。前述した2012年にジェンティルドンナがマークしたレースレコードをコンマ8秒更新したのは、目下の馬場状態を考えれば当然かもしれないが、少なくともそれ以下のレベルでないことは確かだ。おそらくまだ完成途上と言える段階で、これだけのセンスを見せ付けての無敗での戴冠を成し遂げたのだから、これは歴史的名牝となる資格も十分と見ていいだろう。

ラヴズオンリーユー

4戦4勝で樫の女王の座についたラヴズオンリーユー(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着カレンブーケドールは、好位で運んで直線の残り400m手前から先頭に立つ形。勝ち馬に一気に来られてからも、馬体が合ってからは差し返し気味に伸びていた。今日のペースを前々の競馬で勝ちに行った内容を考えても、これまた相当な強さを示すもの。距離の延長も大きくプラスに働いたと言える。

 3着クロノジェネシスは、スタートを決めて枠なりに好位のインをロスなく追走。直線では、道中のポジション的には同じだった2着馬に内から並びかけるシーンがあったものの、最後は突き放されてしまった。ただ、今までにない立ち回りで、こういう競馬ができたのなら、秋へ望みは繋いだと言える。

 4着ウィクトーリアは、今回の作戦がどうだったかはわからないが、またも出遅れて後方で腹をくくる形。脚を十分に溜められたことで、直線では馬群を捌きつつ差を詰めて能力を示したが、やはり距離が少し長い印象を受けた。

 5着ダノンファンタジーは、淀みない流れだったこともあり課題の折り合いもスムーズだったが、直線でジリジリとしか脚を使えなかったあたり、2400mが明らかに長かったと言わざるを得ない。

 コントラチェックは、流れが厳しかったこともあるが、道中は我慢できていても現状ではやはり逃げないとダメな印象。ただ、潜在能力は高く、まだこれからの馬でもあり、精神面での成長を待ちたいところだ。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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