必然の逃走劇 4着レイデオロは「鞍上と呼吸が合わなかったとはいえ…」

佐藤直文 レース回顧
オールカマー

晩生の血が騒ぎだした スティッフェリオ

 1000m通過61秒8のスローな流れに持ち込んだ馬の逃げ切り、という決着は、人気を集めたGI馬たちの凡走に助けられたと見る向きもあるが、レースの上がり3ハロン34秒0は過去10年で最速の数字であった。これに次ぐ34秒1だったのが、ちょうど10年前にマツリダゴッホが逃げ切った年。重賞2勝の実力馬がこの絶妙のペース配分で走ったとあっては、逃げ切りも必然の結果だったと言えよう。

 そのスティッフェリオ。逃げ馬不在のメンバー構成での積極策は作戦通りだったと思えたが、前述したスローのマイペースに持ち込んで、勝負どころからの残り800~200mで、11秒8-11秒2-11秒0と加速したのなら、後続も成す術はなかったと言える。GIのここ2戦こそ善戦止まりだったが、自分で競馬を作る形なら一線級とも差はないことを示す走りであり、今日の勝利を単に展開に恵まれただけ、と片付けるわけにはいかないだろう。

スティッフェリオ

絶妙のペースを形成したスティッフェリオが逃げ切りV(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ミッキースワローは、自分の競馬に徹しての後方待機だったが、勝負どころからのペースアップでポジションを上げることができなかったにもかかわらず、メンバー最速となる33秒4の上がりを駆使しての2着確保。もう少し流れが向けば、といったところだが、コース適性の高さは改めて示した形だ。

 3着グレイルは、直線で狭いところを割って渋太く脚を伸ばしたもの。前走からマイナス16キロとシェイプアップしたことで、巧く体を使えるようになった感を受け、今後に繋がる走りはできたように思う。

 4着レイデオロは、スタートこそ普通に出たが、その後の行きっぷりが一息。残り1000m過ぎから仕掛け気味に動いて行ったが、直線でもうひとつ伸びを欠いたのは、早目に動いた分だろう。鞍上との呼吸が合わなかったとはいえ、チークピーシーズの効果も窺える走りではなく、まだ本物のデキにもなかったか。

 5着クレッシェンドラヴは、直線で狭くなってポジションを下げてしまったのが惜しまれる。最後は盛り返し気味に伸びていただけに、スムーズだったら馬券圏内もあったか。

 ウインブライトは、まだ8分程度の仕上げであったことも確かだが、やはり距離だろう。中山の2200mは、そもそも距離以上の適性が求められるコースであり、いくら中山巧者と言えども距離の壁には勝てなかった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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