前走の鬱憤を晴らす完璧な競馬 グレンツェントが優勝

佐藤直文 レース回顧
レパードS

狙った獲物は逃さない 測ったようにグレンツェント

 近年は好走馬のステップレースが多様化しているとはいえ、過去7回の全てで馬券に絡んでいるのがジャパンダートダービー組だ。今回、そこから唯一の出走となったケイティブレイブだが、逃げて2着に粘った前走が後続に早目に来られる厳しい形となったこともあってか、スローに落としての逃げではなく、淀みないペースで後続を引き離してセーフティーリードを保つ形。決着タイムの1分50秒6は、良馬場ダートとしては歴代2番目の好時計であり、実力通りの結果となったのも頷ける。

 グレンツェントは、前走のユニコーンSがあまりにも後ろから行き過ぎたもので、このレース回顧でも“鞍上の騎乗ぶりに問題があった”と書いたが、気難しい面があったことも確か。陣営も、その課題を克服するべく、前を追いかける形での調教を消化してきたが、その甲斐があったようで、今回は行きっぷり自体が違っていた。相手は逃げているケイティブレイブ一頭と絞って、測ったかのようにゴール前で捕らえる完璧な競馬。追う者の強味を生かしたとも言えるが、改めて前走が力負けではなかったことを証明できたように思える。

グレンツェント

グレンツェント(黄帽)が逃げるケイティブレイヴ(青帽)を差し切って優勝(撮影:日刊ゲンダイ)

 ケイティブレイブは、前半1000mが60秒7。前述したように、タメ逃げではなかったが、これはこれで納得が行く自分の競馬ができたように思う。力は出し切れたはずであり、相手を褒めるべきの2着だ。

 3着レガーロも、勝ち馬同様に気難しい面があった馬だが、これまた稽古での工夫が生きた形。前半で抑えて勝負どころから長くいい脚を使っており、今回は完敗でも先々へ繋がる競馬ができたように思う。

 4着ピットボスは、好位から伸び切れなかったユニコーンSと同様に、道中2番手からピリッとした脚を使えなかった。大崩れしていないあたりは能力を示しているとも言えるが、普通の競馬で勝ち負けになる相手でなかったことも確か。思い切ってハナへ行くか、逆にもっと脚をタメて行くか、結果論かもしれないが、そういう競馬をしてほしかった。

 そこから5馬身離された5着エネスク以下は、現状での力の差がはっきりしたと言えよう。穴人気となっていたネクストムーブは、一気の相手強化が応えたとも言えるが、砂を被って嫌がっていたあたり、経験の差が出てしまったか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。