【天皇賞春回顧】ビザンチンドリームはなぜ差し切れなかった? 「まだ早い」勝利を呼んだ“レーンの我慢”

佐藤直文 レース回顧
天皇賞(春)

剛腕レーンが2マイルを掌握 ヘデントールが頂上に登り詰める

 レース中盤以降の流れに淀みがなかったことで、各馬の仕掛けどころも含めて十分に見応えのある競馬。結果的にはスタミナ勝負となったが、力を出し切れず脚を余す馬もいない、正真正銘の好勝負だった。

 ヘデントールは、課題のスタートを決めてラチ沿いの好位で序盤を運べたのが、まずは勝因のひとつだろう。3コーナーからライバルたちが動いて行ったところで、“まだ早い”と言わんばかりに手綱を抑えたレーン騎手もこれが初騎乗とは思えぬほど完璧に御した形であり、あそこで我慢したことで最後の2着馬の追撃も凌げたように思える。十分なスタミナの証明に加えて、今日のような自在性を発揮できるのであれば、まだまだ大舞台での飛躍も期待できそうだ。

ヘデントール

ゴール板まで凌ぎ切った1番人気ヘデントール(左)がGI初制覇

 2着ビザンチンドリームは、ジックリと構えてラストに懸ける自分の競馬。シュタルケ騎手も2度目の騎乗で持ち味を最大限に引き出したが、今日のところは相手を褒めるしかない。

 3着ショウナンラプンタは、勝負どころから早目に動いて直線を向いたところでは一旦先頭に立ったが、これを目指して並んできた勝ち馬には抵抗できなかった。ただ、現状の力は出し切れたように思う。

 4着サンライズアースは、好位から自分の競馬はできていた。ペースが上がった勝負どころからは追い通しだったが、それでも崩れなかったあたりが素質の高さ。まだこれからもっと良くなる可能性は秘めている。

 5着マイネルエンペラーは、正攻法で持ち味を存分に生かした形。玉砕せずに掲示板を確保できたのは地力強化の現れだろう。

 ジャスティンパレスは、スタートが決まらず勝負どころで一気に進出する厳しい競馬を強いられたが、まだ本来のデキに戻り切っていなかったか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。