春とは「伸び自体が違う」アエロリット どのGIを狙っても上位争い

佐藤直文 レース回顧
毎日王冠

雷神のアシストで牡馬を完封 アエロリット

 2007年のこのレースでチョウサンがマークしたコースレコードにコンマ3秒遅れただけの1分44秒5という高速決着だったが、前半1000m通過は59秒0と、馬場を考えればスローな流れ。逃げた馬に33秒8で上がられては、後続も成す術がなかったと言える。

 アエロリットは、抜群の好スタートを決めたが、鞍上には逃げる意思はなく、何も行かなかったためにハナに立たされた形。前述したスローペースは、瞬発力勝負を呼び込むことにもなるため、本来は平均以上のペースで後続に脚を使わせる形が理想であり、実際に最後に詰め寄られたのもペースが遅すぎたゆえだろう。ただ、内容的には文句のない完勝で、馬体の成長のみならず、春よりもフットワークの伸び自体が違う印象を受けた。今後のローテーションはまだ未定のようだが、どのGIを狙っても上位争いできるはずだ。

アエロリット

1番人気のアエロリットが文句なしの完勝(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ステルヴィオは、道中でジックリと脚を溜め、自分の競馬に徹したもので、今日の結果は相手が強かっただけだろう。古馬相手でも力が通用することを示した上に、賞金も加算できたことで、次につながる一戦となったことだろう。

 3着キセキは、あっと驚く先行策だったが、日経賞のような折り合いを欠いてのものではなく、2番手でスムーズに流れに乗れていた。こういう競馬ができたこと自体、往年の状態に近づきつつあるということで、次はもうワンランク上の走りが期待できるはずだ。

 4着ステファノスも、好位で巧く流れに乗っていたが、この馬には少し上がりが速過ぎたか。キッチリと仕上げてきた感も受けただけに、次への大きな上積みは望めないかもしれない。

 5着ケイアイノーテックは、いつもよりも前のポジションで競馬ができたのは収穫だったが、古馬の一線級相手に通用するのは、もう少し先かもしれない。

 サトノアーサーは、結果的には中団で伸びずバテずの競馬。思い切って前へ行くか、あるいはもっと脚を溜めるか、メリハリを利かせた方がいいと思えるが、このメンバーに入ればこんなものかもしれない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。