久々を埋めて余った能力差 絶対王者モーリスが次なるステージへ

【佐藤直文 先週のレース回顧】
春は条件戦からの4連勝で安田記念を制し、マイル界の頂点に昇り詰めたモーリス。以来のぶっつけ、という過酷な状況下でのマイルGI春秋制覇を成し遂げ、次は香港で世界に挑む。

佐藤直文 レース回顧
マイルCS東京スポーツ杯2歳S

これこそ絶対王者 モーリス 【マイルチャンピオンシップ】

 絶対的な王者が不在だったここ数年の古馬マイル路線に、この春、破竹の勢いでモーリスが出現し、安田記念を制した。当然、その時点では秋のマイルCSも、との期待を賭けていたが、予定していた秋始動戦の毎日王冠を使うことができず、ぶっつけでの臨戦。昨年まで31回の歴史の中で、安田記念から直行して臨んだ馬は、勝ち馬はおろか馬券対象にもなっていない。そんなデータの厚い壁を覆しての春秋マイルGI制覇。これこそ絶対王者と言える走りであった。

 半マイル47秒1、1000m通過59秒0という、GIとしてはかなりスローな流れの中で、モーリスは課題のスタートを決めて中団外目で流れに乗っての追走。安田記念で好位を立ち回る競馬ができたことが、全く力みもないスムーズな走りに繋がったと言える。春の連勝中にはなかった長距離輸送、しかも渋滞で通常よりも時間がかかるというハンデも克服しての勝利は、ぶっつけでもここまで仕上げた陣営の手腕もさることながら、やはり馬の力が一枚も二枚も上だったということ。次は香港で、世界を驚かせてくれるはずだ。

モーリス

力強い末脚で春秋マイルGI制覇を成し遂げたモーリス(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着フィエロは、今日の流れで前走のような直線勝負では、到底届かなかったはず。これまた抜群のスタートから、好位で流れに乗り、直線でもロスなく馬群を捌いたミルコ・デムーロ騎手の完璧な騎乗ぶりであった。昨年のレベルでこの競馬ができていたら、といったところだが、年齢の割にレースで消耗をしていない馬であり、まだまだチャンスはある。

 3着イスラボニータは、上位2頭とは対照的に、出負けして理想のポジションが取れなかったもの。マイル戦が久々だった影響もあったかと思われるが、それでも2着とクビ差なら、1番人気に応えられなかったとはいえ、地力を改めて証明する走りだったと言える。

 サトノアラジンは、いつもよりは前目の位置で、ルメール騎手もほぼ完璧な騎乗だった。それで4着という結果は、現状での力の差だろう。ただ、マイル路線でのキャリアは浅い馬であり、まだまだ進化しそう。重賞制覇の日も、そう遠くはないはずだ。

 5着アルビアーノは、前走ほどスムーズに折り合えなかったことで、最後の伸びを欠いた形。ただ、持てる能力自体の高さは示す内容で、更なる精神面での成長があれば、一流マイラーとしての活躍が見込めるだろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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