最後に羽ばたいたアカイトリノムスメ 10着ソダシ敗因は「歯が折れた」だけではない?

佐藤直文 レース回顧
秋華賞

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“12冠ベビー”悲願のビッグタイトル アカイトリノムスメ

 縦長の展開になったとはいえ、前半1000m通過は61秒2。少し時計のかかる馬場ではあったがスローな流れだったことは確かで、2番手でスムーズに折り合って運んだソダシにとっては、最高のシチュエーションだったはずだ。その状況においてここまで負けるのは、テンションを含めた体調面や「歯が折れる」というアクシデントの影響もあったろうが、それだけではないと思える。

 アカイトリノムスメは、好位から同じ勝負服のソダシを目標に運ぶのは春の2冠と同じレースプランだったが、直線半ばで目標の予想外の失速により早目に先頭に立つ形ながら、内と外からの猛追を凌いでの勝利。体重にこそ大きな変化はなかったものの、ひと夏を越しての馬体の成長には目をみはるべきものがあり、ラストのもうひと伸びにも繋がったと言える。

ソダシとアカイトリノムスメ

ソダシとアカイトリノムスメ、同じ勝負服2頭の明暗はハッキリと分かれた

 2着ファインルージュは、今日の流れを考えると少し位置取りが後ろすぎた嫌いはあるものの、最後まで長く脚を使って伸びたもの。自身の力は出し切っており、結果は勝ち馬を褒めるべきだろう。

 3着アンドヴァラナウトは、勝ち馬と同じ位置取りで流れに乗り、仕掛けのタイミングをワンテンポ遅らせて、直線では内に進路を取った形。未対決だった上位2頭には及ばなかったものの、ローズS勝ちの力は十分に示したと言える。

 4着エイシンヒテンは、注文通りにハナへ行き、自分の形に持ち込めた。直線で迫るソダシを振り切った時には、やったかと思わせたほど見せ場十分の内容で、これまた自分の力は出し切れた。

 ユーバーレーベンは、元々が叩き良化型なのに加え、なんとかここに間に合わせたという仕上げ。今日の結果は参考外と言えるだけに、次に期待したい。

 そして冒頭で触れたソダシの敗因の、それだけではない部分。札幌記念では2000mの距離に対応してみせたものの、フラットな札幌と直線に急坂が待ち受ける阪神とでは同じ2000mでも要求されるものが違う。オークス同様に、距離的な限界を示す一戦だったのではないだろうか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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