【天皇賞・春回顧】「なぜ失速」タイトルホルダー 捨て切れない“可能性”

佐藤直文 レース回顧
天皇賞(春)

淀に誕生したニューヒーロー “Good Boy”ジャスティンパレスが頂点へ

 グランドオープンした新装京都にして初めてのGIは、雨の影響が残った生憎の渋った馬場。馬場改修で水捌けの改善がなされたことで回復が進んでも、稍重止まりでの施行となった。大きく離れての入線となった1頭を含み、残念ながら3頭が競走中に疾病を発症する結果となったのは、たまたまのことであろうが、よりステイヤーとしての資質が問われるタフな状況下であったことは確かだろう。

 ジャスティンパレスは、道中は中団のインで無駄に動くことなくリズム良く立ち回り、勝負どころで馬群の外からスッと好位に押し上げる文句なしのレース運び。こういった競馬ができること自体、長距離への適性を十分に示したと言えるが、前走で有馬記念から大きく増えていた馬体を維持しての出走は、その増加分がそのまま成長分だったことの証しだったろう。ただ1頭だけ、34秒台で上がっての2馬身半差は、まさに完勝であった。

ジャスティンパレス

2番人気の4歳馬ジャスティンパレスがルメール騎手を背に完勝のゴール

 2着ディープボンドは、前でいろいろあって直線で早目に先頭に立たされる形となったが、それでも自分の競馬はできていた。渋った馬場も味方したとはいえ、年齢的な衰えも見せずに3年連続での2着確保は頭の下がる激走だった。

 3着シルヴァーソニックは、外枠もあってか後方で折り合い重視での競馬となったが、勝負どころから長く脚を使って上位に迫ったあたりがさすがはダミアン・レーン。持てる力は出し切れたように思う。

 4着ブレークアップは、中団から勝ち馬を目標に動いて渋太く伸びた形。前走での勝ち馬との着差を考えても、これくらいの脚力を見せて当然だったか。

 5着マテンロウレオは、3000m級の距離は初めてだったが、ステイヤーとしての資質はアピールできた走りだった。

 ボルドグフーシュは、前半は自分のリズムを守って勝負どころから進出する本来の競馬ができたはずだったが、直線での伸びは本来の姿ではなかった。気分的なものもあるのか、見た目以上に乗り難しい馬なのかもしれない。アスクビクターモアは、前走とは違いスタートを決めてこれまた理想的な競馬ができていたが、勝負どころからの進みの差が菊花賞とは歴然の違い。当時の体調に戻り切っていなかったと見るべきだ。タイトルホルダーは、スタートから押して出して行ったところで外から一気に来られて一旦はハナを譲る形。ただ、その時点で本来の行きっぷりではない印象を受けた。調教過程では窺い知ることができなかったとはいえ、不良馬場だった日経賞での激走による目に見えない疲れが、結果的にアクシデントを誘引した可能性も捨て切れない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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